ついぽろっと ページ4
「先生いますか?」
「A?」
放課後、理科室の扉をあけるとピンセットを持ったユンギ先生がこちらを見た。
白衣、だ。珍しい。
見慣れない姿にドキドキしていると、「なに? 質問?」と先生から聞いてくれて、我に返ってノートと教科書を開いた。
「先生理科の先生ですよね、物理わかりますか?」
「分かるけど。物理の先生に聞かねえの?」
「……今日居眠りしてて注意されたから行きにくい」
「自業自得じゃねえか」
と言いつつも、手を置いて、椅子に座るよう促してくれてノートを「どれ」と覗き込んでくれる。いちいち優しい、かっこいい。
これらが全て素なのがずるい。タチが悪い。
計算の応用問題は一人で理解するには難しくて、ジヒョに聞こうとしたら「それはユンギ先生しか」と背中を押されてここまで来た。
先生の長い指が問題文や図をなぞるのをぼーっと見てしまう。きちんと解説を聞かないといけないのに。
「聞いてる?」
「き、聞いてますよ!」
「次の物理ちゃんと点取れよ」
「うっ、頑張ります」
でも理系はからっきしだし、とブツブツと言い訳していると「あのなあ」と先生が手を止めた。
教えてもらってるのにそんなことを言ったからかな、怒らせた、だろうか。
ぱちっと目が合って、頬杖をついたまま先生が口を開いた。
「できないと思ってたら教えねえよ、俺も」
「え、」
「できるよ。いつもちゃんと頑張ってんだろ」
柔く、笑む。
好き、すぎて。
好きすぎて泣きそうになる。込み上げてくる感情は名前をつけるには大きすぎて、どう顔に出せばいいのかもわからない。
そんな私の感情を放って、先生はまた指を沿わせた。理解しなきゃいけないのに、気持ちの波が感覚を塞いでしまって先生を見ることしか許してくれない。
「ユンギ先生」
「ん?」
「私先生のこと好きです」
あ、言っちゃった。
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ちよ(プロフ) - 飴さん» ありがとうございます! 穏やかでほんわりした甘いお話にしたかったので嬉しいです( ; ; )! (2020年5月5日 22時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
飴(プロフ) - ぽかぽかして心あったまるお話でした! (2020年5月3日 9時) (レス) id: a89f62ee0c (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - 岩本菜那さん» 何か新しい妄想がパッと浮かんだらここに番外編書きにきますね( ˘ω˘ )! (2019年10月3日 13時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
岩本菜那(プロフ) - 続編凄い見たいです!! (2019年9月30日 16時) (レス) id: 60aae2806b (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - いさなさん» ひょえー!!!! ありがとうございますー!!!! (2019年9月30日 11時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちよ | 作成日時:2019年9月7日 20時