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向かう先 ページ26

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「先生!」

弾んだ声で、まっすぐな瞳は俺を真っ先に捉える。彼女が見る世界の真ん中に自分がいることにたまらなく高揚する時がある。


可愛い生徒の1人。


そう言ってしまえば楽だった。どんくさいところや真面目なところ、お人好しなところが放って置けなくて、他の生徒よりほんの少しだけ気にかける存在。
そう、それだけだったのに。


「好きです」とAが爆弾を落としてきた時、たしかに心の隅の隅の方で「あ、こいつのこと好きだ」と思ってしまって。

そんな自分に気がついて驚きのあまり固まってしまった。

動揺して実験器具のプレパラートを割ってしまった俺を見て、みたことないくらい緊張していた顔が綻んだ。
そうして笑うのだ。「動揺してる」だなんて。お前のせいだってのに。



教師と生徒。

ドラマチックで背徳的な関係の名前は、現実的には危険で問題のあるもの。

自分の立場も彼女の立場も理解していて、感情を理性で抑えることなんて簡単だったのに。
そんな俺のことなんておかまいなしに彼女は何度も「ユンギ先生」と俺のことを呼ぶから。

「ん?」

とか、余裕のあるふりをして振り向いていた。振り向く前、「かわいいな」なんて思う心を飲み込んでから。



どれもこれも守りたかった。
Aの気持ちも、将来も、自分のことも。



全て欲張った結果が「待ってる」だなんて確証のない言葉で。

それなのにあいつは心底嬉しそうに喜ぶから、たとえAの俺への気持ちが違う形に変化したとしても、卒業式を終えるまでは絶対に待とうと決めたのだ。




「長かったなー……」

新入生を迎え入れるために準備をしている春の花々に視線を向けていると、おなじみの卒業ソングをBGMに、保護者や生徒のざわめきが聞こえてきた。


さてどうしたもんか、あいつ、どこにいくんだろう




少し考えてから、とりあえず、と足を踏み出した。


まだ少し肌寒いのに、空気はどこか暖かくてここちいい。

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ちよ(プロフ) - 飴さん» ありがとうございます! 穏やかでほんわりした甘いお話にしたかったので嬉しいです( ; ; )! (2020年5月5日 22時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ぽかぽかして心あったまるお話でした! (2020年5月3日 9時) (レス) id: a89f62ee0c (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - 岩本菜那さん» 何か新しい妄想がパッと浮かんだらここに番外編書きにきますね( ˘ω˘ )! (2019年10月3日 13時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)
岩本菜那(プロフ) - 続編凄い見たいです!! (2019年9月30日 16時) (レス) id: 60aae2806b (このIDを非表示/違反報告)
ちよ(プロフ) - いさなさん» ひょえー!!!! ありがとうございますー!!!! (2019年9月30日 11時) (レス) id: 9ab381c422 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ちよ | 作成日時:2019年9月7日 20時

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