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***
「ひ、久しぶり。」
.
この人と目を合わせて会話をするのは、
あの日以来だった。
この人が、私を振った日以来…
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「ごめんな、ぼーっとしてて。」
「いや、こちらこそ。」
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立ち上がって、スカートについた埃を払う。
そんな私を、この人はジッと見ている。
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「…何か付いてる?」
「あ、いや…」
「ふぅん…」
.
そっか、と今度は私から
目線を外した。
.
大好きだった、この人の声。
大好きだった、この人の目…
.
それを今、こんな身近に感じてるというのに、
胸はもう痛くなかった。
あのとき、泣くのを堪えるのに必死だったのに
今は普通に会話ができている。
.
「よいしょ…」
.
私は屈んで、散らばった
プリントを集める。
彼も遅れて、一緒にプリントを
集めてくれて。
.
「…なぁ。」
「ん?」
「元気だった?」
.
元気だったかって、
それをあなたが聞くのか。
あなたが私を振ったくせに。
.
でも、怒りとか呆れより、何だか本当にどうでも良くて、
私はつい噴出してしまう。
.
「元気だったよ。」
「…そう、か。」
.
一枚一枚プリントを集めて
重ねていく。
.
あぁ、佐藤くんのプリント、
足跡付いちゃった…
ごめんなさいと心の中で謝りながら
彼のプリントも集めて…
.
「…俺は全然元気じゃなかったよ。」
「え?」
.
ぽつりと降ってきた、どこか参ったような声に
思わず彼を見た。
そして、ふいに付け加えられたのは…
.
「別れてから、ずっとAのこと考えてた。」
「は…」
.
弱りきったその台詞に、私はつい
呆れた声を返してしまう。
だって、何度も繰り返すけど、振った人が
振られた人のことを考えるって、変というか…
.
「……なんで?」
.
一応、その理由は聞いてみる。
すると彼は、視線を少し遠くへと投げて
ぽつりと呟いた。
.
「…彼女と、別れた。」
***
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まりも(プロフ) - ひささん» お返事遅くなり申し訳ございません(/ _ ; ) リアルの知念さんの懐もとても大きいですよね(^O^)良かったと言ってくださり、書いた甲斐がありました。ありがとうございます^_^ (2021年5月1日 1時) (レス) id: 9a2317564f (このIDを非表示/違反報告)
ひさ - 知念くんの器の大きさと優しさに泣けました。きっと侑李はこんな感じだと思います。凄く良かったです! (2021年4月19日 22時) (レス) id: bc0d6eba18 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - JUMPLOVE子さん» こちらこそお返事遅くなってごめんなさい。よ、読みやすいんですか!?( ; ゜Д゜)そしてぼろ泣きにもびっくりです。ありがとうございます(*/□\*)3周目も楽しんでいただけたら嬉しいです(〃ω〃)笑 (2021年1月1日 20時) (レス) id: aaad2f0c31 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - はるかさん» お返事遅くなってごめんなさい!前作も読んでくださってありがとうございます(*/□\*)涙まで流してくださるなんて、こちらこそ涙が出そうです(>_<)ありがとうございます(; _ ;) (2021年1月1日 20時) (レス) id: aaad2f0c31 (このIDを非表示/違反報告)
JUMPLOVE子 - 遅くなりましたが、お疲れ様でした!文章下手くそなんて書いてましたけど全然そんなことないです!!とっても読みやすくて最後の最後でボロ泣きさせていただきました(;ω;)今から3周目いってきます!(笑) (2020年12月2日 22時) (レス) id: 82c7647d6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まりも | 作成日時:2020年11月26日 15時