*-＊契約結婚＊-*

鋭い視線…… ページ5

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しばらくして


「ただいま帰りました」

扉を開けて会長の元へ歩いてくる男性


「遅かったな。
こちらが、前に話したお前の結婚相手だ。」

突然、話を振られて驚くと
視線だけ私の方を見て

「そうですか…………」

肯定でも否定でもない返事。

「初めまして。
Aと言います…………
よろしくお願いします…………」

椅子から立ち上がり慌てて挨拶をすると
表情も変えずに会釈だけして部屋から出ていった


「ちょっと気難しい人間だが、気にしないでくれ。
おいっ、部屋に案内してあげなさい。」


私は、家政婦の方に今日から住む部屋に案内してもらう

長い長い廊下から別棟に移動し、隣に建つ家。


「こちらが、新居となります。
何かお困りの事がありましたら、遠慮なく申して下さい。」

私に頭を下げて、帰ろうとする家政婦の方を捕まえて

「あっ、あのっ、先程の方のお名前は？」


肝心なことを聞いていなかった
私のお相手の名前すら知らないなんて………


「社長のお名前ですか………？
ジョンウンさんですよ。お仕事では、イェソンさんと名乗っているみたいですが。」


ジョンウンさん。
イェソンさん。


何だろう、まだまだピースの足りないパズルみたい

だけど、少しずつ埋まる嬉しさと期待でいっぱいだった


玄関を開けると広い廊下から繋がるリビング。

２階はプライベートルーム。

キッチンも広くて思わず
「これが家なの？」と口に出してしまう。

今まで育った我が家、それから引き取られた施設とは、話にならないくらいの広さ


やっぱりお金持ちってスゴい………


リビングのソファーに座ると

「あれ？ジョンウンさんは……？」

ふと先に会長の部屋から出ていったジョンウンさんがいないことに気づく


「おでかけなのかな………」


とりあえず夕食準備でも。

冷蔵庫の中身も申し訳ないくらい揃っていて
いろいろ手に取りながらメニューを決める


初日だから、好き嫌いもわからない。

だから無難にカレーライスを作ることにした。


いつもなら賑やかな台所。
足元に小さい子たちがまとわりついて
「お腹空いた」の連呼だったのに

物音ひとつしないこの部屋は
まるで外の世界から遮断されているみたいで

「早く帰って来ないかな………」

まだ話すら、ううん、挨拶すらしていないジョンウンさんの帰りが気になってしまう


カレーライスの準備ができて

極度の緊張から疲れた私は、ソファーに座ると睡魔に襲われ横になって目を閉じた………

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