こんな世界でも愛を教えてくれますか4 (ページ21)

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167：安心するんだページ21

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『跡継ぎは絶対だ。私がどうにかして避けられるような環境じゃない。どんなに足掻いたって、成人すれば産まされる。』

羽京｢…だから、それが君のタイムリミット｣

『ああ。子の命と引き換えに、私が無惨に死んでいく夢を何度も見る。今でも。……正直怖いよ、君たちを置いて死んでいくのは…』

彼女の言葉は、重くて、痛くて、苦しくて、同情で泣いてしまいそうになったけど、彼女の苦痛を何も知らない僕が泣くのは、違うと思うから。

弱く、手を握った。

羽京｢少しでも怖い夜があるなら、僕を呼んで。それで、もし、僕に全てを話して、少しでも気が楽になるのなら、聞くから。どんなに小さな声でも聞くから。｣

それで、もしも、

そんな事で、少しでも気が楽になって、醜い大人に曲げられたその思想を少しでも正せるなら。

僕はなんだってしよう。

羽京｢弱音は悪い事じゃない。だから、溜めないで。思い悩んでそんな思想に陥るくらいなら、僕に話して欲しい｣

やっぱり、手を強く握って、彼女の瞳を強く見詰めて、零れそうになる涙を拭った。

ずび、と鼻を啜れば、彼女は驚いた後に、楽しそうに笑ったのだ。

『……ふふ、うきょう、はなみずだ』

羽京｢も〜！鼻水だよ！！ごめん、この歳になると涙脆くて…！｣

『ふふ、ふふふ、良かった、嫌われてなくて』

羽京｢君のことはずっと大好きだよ｣

『えぇ、私、君に何もしていないのに…』

羽京｢ごめん、今のキモかったね｣

急に正気に戻った羽京に、また眉を下げて笑う琴寧。

羽京が前の話し方に戻って、嬉しいのだ。

ぎゅうっと、握った手の音を聞いて、また、子供じみた幼さに心が締め付けられる。

星空を詰め込んだ、綺麗な瞳に戻った彼女の瞳を見て、彼女の本心が垣間見えた気がした。

『私も、君が好きだよ』

羽京｢えっ｣

『君の瞳がね、母の瞳の色と一緒なんだ。深い海の、優しい緑色。この、服の色と一緒。服に関しては龍水が選んだのだが…ふふ、きもいだろう？』

羽京｢…あはっ、あははっ！気持ち悪くなんか無いよ、似合ってる！｣

『あとはね、実は私、1人で鼻をかめないんだ。あれは陽が鼻をかんでるのを見て真似した諸刃の演技さ』

羽京｢そんなことだろうと思ったよ！あはははっ！｣

握った手が、あったかい。

琴寧は嬉しそうに、笑う彼の瞳を眺めていた。

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