こんな世界でも愛を教えてくれますか4 (ページ20)

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166：本音を聞かせてページ20

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認めたくなかった。

どんなに彼女が人の命を助けられる医者でも、自分の知らない人は全員切り捨てだなんて。

そんな、氷月がゴーザン達を殺してしまうのを、必死で食い止めるような君が、真っ直ぐに間違えてるなんて、考えたくなかったんだ。

だから君を避けるような行動をした。

羽京｢本気で70億人を助けろなんて無茶なことは言わない。でもどうしたってその思想は、人を悲しませる。1人だって切り捨てられていい人間はいないんだよ｣

『それも…ゲンが見抜いたんだね。私はどうせ死ぬから、独善的な思考に陥りやすいって』

羽京｢どうせ死ぬなんて、そんな事、言わないでくれ、この世界じゃもう病気も治ったんだろう？千空が君の体を温める科学を作ってくれる！

ねぇ、そんな考え、やめてよ……｣

『それが君の本音か』

こちらがこんなに必死に訴えているのに、なんだか彼女には響いてないように感じて、こんな風になってしまった、目の前の子供が、ひとりぼっちの子供が、どうしようもなく可哀想で、

君は、今までどんな人生を歩んできたんだ。

羽京｢君が嫌いなわけじゃないんだ。ただ、君といるとどうしても考えさせられてしまって。

僕はどうしようもなく、君を救いたいんだ。｣

『………なら、少しだけ、本音を話させてくれ』

羽京｢！｣

聞かれたくない内容なのか、周りに誰もいないのに、声が一段と小さくなる。

司を騙してみせた時の、あの芯の通った声など、跡形も無いか細い声で、何かに怯えているような、

『…………何か、医学的な根拠があって余命を診断したわけじゃないんだ。普通の家庭なら、適切な治療をしていけば長生きだってできる。』

伏せた目の奥が、少しずつ、濁っていく。

『だが、私は安居院琴寧だ。大きな財閥の一人娘。決まった人間との結婚は避けられない。結局私は両親と同じ、望まぬ結婚により子供を産まされる。

そして私は、出産の激痛に耐えられず死ぬ。』

言葉が、出なかった。

家の重圧というのは、子供をこんなにも痛ましい表情にするのか。

彼女が今実際に死にそうな訳でもない、ゲンの言っていたとおり、病気は治っている。

ただ、その瞳が、訳もなく心臓を握り潰して。

こちらに微笑んだ彼女の瞳は、あの水泳教室で見た綺麗な輝きを失い、まるで深海の石ころのようだった。

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