160:脳内シュミレーション ページ14
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『体を洗わなくてはね』
コハク「私が髪を洗おう」
『千空にシャンプーを作って貰えばよかった』
湯船から上がって桶に湯を入れたら、石鹸を入れて泡立てる。
最初に、琴寧は自分の身体を洗い、コハクは琴寧の頭を洗い始めた。
『ルリはそんな中でも元気だよ、君がいない間もずっと健康体だ』
コハク「……クロム、とは答えなかったのか?」
『村の子が聞いたのだけど、クロムはそんな事しない、の一点張りでね。』
コハク「いかにもルリ姉が言いそうだな」
長くしなやかな髪。
姉のとは正反対の黒髪は、姉のより細く、少しでも刃を当てればプツリと切れてしまいそうだ。
髪全体を石鹸で洗う訳にも行かず、頭皮だけに泡を揉みこんで、あとは櫛で梳かすことにした。
梳かし終わり、上から桶で石鹸を流す。
今度は反対に、コハクの髪を洗う番だ。
『おお、すごい髪だね』
コハク「千空にも負けない剛毛だろう」
『ああ…逞しくて、綺麗だ。金糸のようだね』
コハク「……ふふ、ありがとう」
荒っぽいこちらのヘッドスパとは裏腹に効率的に、頭皮だけを綺麗にしてくれている。
眠くなる施術だ。
コハク「……何故、誰にされても同じだと?」
目覚め代わりに、話題を提供すると、少し考えたあと、答えが返ってきた。
『正直、キスという行為自体に今まで、意味を見いだせなかったのだ。しかし人は、安心のためか、傷心のためか、キスに感情を乗せる。』
司を安心させるため頬にキスをした時も、龍水が別れ際にキスをしてきた時も、琴寧はその感情を読み取った。
読み取った上で、次の行動に移した。
『……だが、無理やり、という条件に違和感が…そこに感情はあるのか?』
琴寧の手が止まる。
相手を誰で想像しているのか、無理やりキスをされるという状況のシュミレーションをして、頭を悩ませているようだ。
『だから、多分、だよ?多分、私は誰にされても驚いて、固まってしまう。嬉しいとか、嫌だとか、それどころじゃないと思うんだ』
コハク「……ハハッ!不器用だな!」
『む、慣れてないだけだよ、慣れればきっと…』
コハク「慣れないでくれ、そんな状況に!」
器用な手つきとは正反対に、不器用な言葉を紡いだ彼女に、笑いが込み上げる。
笑う口を塞ぐように湯で頭を流され、彼女はとっとと湯船に浸かってしまった。
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AKU(プロフ) - めっちゃ面白すぎます!!更新待ってます! (4月5日 21時) (レス) id: 7e29cefaa6 (このIDを非表示/違反報告)
柏餅(プロフ) - こちらこそありがとうございます! (1月22日 6時) (レス) id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
栗子(プロフ) - 柏餅さん» わかります!!🍀*゜いつもコメントありがとうございます!!- ̗̀ ෆ( ˶'ᵕ'˶)ෆ ̖́-🩵🩶🩷 (1月13日 17時) (レス) id: 117de47d08 (このIDを非表示/違反報告)
柏餅(プロフ) - 夢主ちゃんの純粋さが可愛いすぎます!!! (1月9日 13時) (レス) @page15 id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
柏餅(プロフ) - 続編嬉しいすぎます! (1月9日 13時) (レス) id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:栗子 | 作成日時:2023年12月26日 23時