こんな世界でも愛を教えてくれますか4 (ページ12)

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158：財閥のプリンセスページ12

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クロム｢おう、おかえり……？？？｣

羽京｢た、ただいま〜｣

てっきり川に泳ぎの練習をしに行ったのだと思っていたが、羽京の背中には眉を下げ、悲しい表情をした琴寧がおり、その琴寧の手には生活用水が入ったガラス瓶が握られていた。

『冷たくて入れなかった…』

そう、もとより病弱で寒さに弱い体を持つ琴寧は、健康体となったこの世界でさえ、初夏の冷たい水は体に堪えるのだ。

夏の川の冷たさを、去年ニッキーを騙した時に思い知った琴寧は、川に指先を付けてUターンを決定した。

その証拠に指先は真っ白だ。

羽京｢練習はもっと本格的に夏が始まってからだね。場所も川じゃなくて海の浅瀬にしよう。｣

『うん…』

瓶に詰めていた生姜の蜂蜜漬けを一口食べて、暖を取るために羽京にギュッと抱き着く。

羽京は傷心に追い打ちをかけるかのように容赦なく琴寧を籠に降ろし作業に向かっていった。

『…龍水』

龍水｢何の抵抗も無く合理的最善手を選んだな｣

女性で力持ちでもあるコハクよりも、男な上にミジンコ体力の千空よりも、体が大きく、自分がいても何ら問題なく身動きが取れる龍水を選んだ琴寧。

そこに何の感情も持ち合わせていない。

こちらの気持ちに配慮しちゃいない。

龍水｢(そんなところも愛おしい、などと)｣

この悪い癖をどうすればよいのか。

手を伸ばす。

仰せのままに、と抱き上げ、そのままみんなが会議をするラボまで歩いて行った。

『…いたい、いたい』

龍水｢俺の首に手を当てておけ｣

『……龍水の髪、ベタベタしてるね、海に入ったの？』

龍水｢む、しばらく風呂に入ってなかったな。無作法だった、今日入るとしよう！｣

『ふふ、じゃあみんなで行こうか』

初夏とはいえ汗もかくのだろう、少しばかり湿った首元がいやに温かくて、川の冷たさに驚いていた指先の痛みを和らげてくれる。

彼に、自分の病気の事など1度も言ったことは無いのに、何も言わず受け入れて、対応してくれた。

私がどれほど横暴でわがままでも、彼は“プリンセス”とだけ言って、笑うんだ。

『(彼が私の、実の兄だったらどれほど)』

どれほど幸せか。

そこには必ず感情がある。

羽京｢龍水、次の探索場所だけど…｣

『…次は周りの植生や動物にも注目するといい、彼らはその土地の全て知る識者なのだからね』

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