144:暖かい匂い ページ47
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2人きり。
少し様子が気になって、隣に椅子を持ってきて、座ってみる。
『…』
こちらには気づかず、自分の膝をモールスのようなリズムでなぞる。
絵のようなその記号を眺めて、意味はわからないから、結局彼女の横顔に視線が行く。
口に手を当てて、深く考えている様子が、
ゲン「(またかわいい…)」
ひと仕事を終えた科学王国民たちが、肩の荷を降ろし休息に入る。
ゆっくりとした空気が流れ始めて、こちらもそれに合わせてゆったりと彼女を眺める。
夏のはじまりの風が吹いた。
ゲン「…ん〜……暖かくなってきたねぇ…」
『…そうだね…私の好きな季節だ』
ゲン「春から夏〜?」
『暖かくて、息を吸い込んでも痛くない。秋も冬も好きだが、この匂いには勝てない。』
ゲン「……じゃ〜あ〜、今度ピクニックしよっか」
膝の記号と向き合っていた琴寧が、目を見開いて勢いよくゲンの方を見る。
ゲンは驚いて目を逸らした。
『ピクニック、しよう、ゲン。大樹や杠も誘って、そうだなぁ、海の見える浜辺に行こう。』
ゲン「う、ん、そうね!楽しそう!」
『未来と浜辺で日光浴の約束をしていたんだ。きっと暖かいって、夏だと暑いからって。みんなでそこでお昼寝をしよう!』
ゲン「サイコー!」
楽しそうにゲンの手を握って、目を瞑って、にやにやとピクニックの想像をする。
3700年前は芝生で地べたに座って食事など、想像することさえ禁止されていた身である琴寧は、父のいないこの世界でピクニックが実現することを心から喜ぶ。
この原始の世界では屋内での食事の方が珍しいものの、わざわざ食事のために海まで行って、レジャーシートを敷いて、お弁当を食べるという行為に魅力を感じるのだ。
琴寧はゲンの戸惑いの表情を気にもせず、彼の手をひっくり返して、手相をなぞったり、指と指の間を伸ばしてぐにぐにと弄ったり、手遊びをしていた。
『貝殻のネックレスを作ろう、それと………はしゃぎすぎたかな』
ゲン「まさか!俺もゴイスー楽しみよ!」
『ふふ、君とこんなに長く話すのは久しぶりだね』
ゲン「そ、そうかな?」
『ハートのクイーンを引かせてくれてありがとう』
ゲン「そうね〜、理由だけ聞かせてちょうだい」
『うーん、実はね…』
さっきとは打って変わって、2人は小さな声で秘密の話をした。
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柏餅(プロフ) - 栗子さん» \(//∇//)\ (2月23日 11時) (レス) id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
栗子(プロフ) - 柏餅さん» あけましておめでとうございます〜!🐉⛩️🎍ハートのクイーンは今後も重要な要素なので注目されて嬉しいです!!✨今年もよろしくお願いします!!🫶 (1月13日 17時) (レス) id: 117de47d08 (このIDを非表示/違反報告)
柏餅(プロフ) - 夢主ちゃんハートのクイーンが欲しかったのお嬢すぎて好きです!遅れましたが明けましておめでとうございます! (1月9日 13時) (レス) @page50 id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
柏餅(プロフ) - マジで共感の嵐です! (12月7日 17時) (レス) id: 55951e8f98 (このIDを非表示/違反報告)
栗子(プロフ) - 柏餅さん» Dr.STONEの女の子ってマジでいい女ばっかですよね〜!最新話まで見てくれてありがとうございます!!🥳 (12月4日 23時) (レス) id: 117de47d08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:栗子 | 作成日時:2023年10月3日 22時