86：狼煙を上げろ ページ38
，
こちらを見ることも無くなった氷月に、琴寧が半笑いで息を切らす。
『(舐められているな…ふふふ、腱を斬られておいてよかった……私は氷月にとって取るに足らない軟弱者。そう思わせておけば私が2人の足を引っ張る事も無い。)』
司の後悔とは裏腹に、琴寧は生き生きと流木を杖代わりに、体を少しずつ森林へ進める。
歩く度に激痛が走る。
手先も震えてきた。痛みが酷い。
けど、
『私は、2人の笑顔を守るんだ…！』
ようやく未来が目覚めて、兄妹の笑顔を見ることができたのに、それを失うなんて、許さない。
君も笑って、やっと私の願いは叶うんだ。
やっとの思いで草木の茂る森の方までたどり着く。
暗い森の中手探りで枯草を集める。
腰の紐を枯れ枝に括りつけ、火を起こした。
千空たちを探す彼らに、場所を知らしめる大きな狼煙を上げるのだ。
手の先が刺された様に痛い。
不便な体に生まれた。
多くの人に心配をかけた。
だからせめて心配をかけた分だけは、私の力で精一杯の助けになりたい。
コハク｢千空！！！司！！！琴寧！！！どこにいるんだ！！｣
一方、氷月に突き落とされた3人を探す一行は、開けた川の高台から辺りを見渡す。
夜明けもまだ見込めぬ暗く広い森林で、4人の人間を見つけるのは困難を極めた。
コハクは、他の人よりも目が良い。
そのため誰よりも躍起になって4人を探していた。
羽京｢コハクちゃん！そっちに人の気配は聞こえてこないよ！｣
コハク｢…っ！！｣
そんなコハクの様子を見て羽京が少しずつ琴寧と、千空の人柄を把握し始めた。
羽京｢(少なくとも欠けてはいけない大切な仲間……巫女様とは半年以上音信も通ってなかったのに、まるで恋人がいなくなったみたいな焦り方だ。)｣
コハクとはそんな関係じゃないとわかっている。
しかし誰がどう見ても、コハクはこの中で1番血眼になって彼らを探している。
クロムの肺炎を偽った時から、琴寧の底力を警戒していた羽京は、そんなコハクの態度を見て改めて思い知らされる。
羽京｢(上に立つ人間…少なくとも、その血縁を持った人で間違いなさそうだな)｣
1人、心当たりのある人物像が思い浮かぶ。
それに呼応するように、遠くで大きく豪胆な狼煙の音が聞こえてきた。
，
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 137人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
栗子(プロフ) - あんあんねこさん» ありがとうございます！💕💕お話のスピード遅くて主人公がどうなっていくのかのろりのろり更新ですけど気長に待ってくれると嬉しいなっ☆💦めっちゃ嬉しいです！頑張ります！！(ง •̀_•́)ง (9月24日 1時) (
レス) @page41 id: 117de47d08 (このIDを非表示/違反報告)
あんあんねこ(プロフ) - この作品本当に大好きです！！！！主人公がどうなるのか、、、！！！めちゃくちゃ楽しみです！！作者様のペースで頑張ってくださいっ！！！！！！！！！ (9月23日 12時) (レス) @page40 id: 3021c16fe7 (このIDを非表示/違反報告)
栗子(プロフ) - 幸子さん» きゃー！✨👏嬉しいけど体調には気を付けてくださいね！？ありがとうございます💕最近出せない日多いから頑張りますね！💪 (9月21日 19時) (レス) id: 117de47d08 (このIDを非表示/違反報告)
幸子 - 夜更かしして全話読みました！最高です！！続き楽しみにしてます( *´꒳`*) (9月21日 16時) (レス) @page38 id: b07e9edb38 (このIDを非表示/違反報告)
栗子(プロフ) - ナナさん» コメントありがとうございます！！頑張ります！🔥 (8月31日 13時) (レス) id: 117de47d08 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：栗子 | 作成日時：2023年8月23日 21時
