80:おはよう ページ32
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『やさしい?』
司「(好きだよ、大好きだ。)」
手を握られたまま、首を傾げこちらを見下ろす。
千空に勝てれば、この想いを完全に封じ込める事が出来たのに、みっともなく負けて、すがりついて、このザマだ。
目指すものは変わらない。
だけど、君を、想う気持ちが、想う余裕が、できてしまって。
『ふふ、私が優しいって?』
そのどうしようもない黒い液体が、漏れ出ないよう抑え込んで、笑って、彼女の手を離した。
司「うん、普通自分を歩けなくした人に、同志なんて言葉、使わないよ」
『……君は、普通が好きだな』
可愛いと言った時も、今だって、司は普通を基準に考える。
自分が普通ではないと自覚しているからこそ、それに憧れて、他人にも、無意識に伝えてる。
普通のまま育ちたかったよね。
普通の幸せが、欲しかったよね。
『私もだ』
笑顔の司になんだか肩の荷が降りて、
もう、私はいらないんじゃないかと感じる。
らしくない、
らしくないが、それもまた心地よい。
司「…じゃあ、おやすみ、琴寧」
『ああ、おやすみ』
がこんっ
車が揺れる音がする。
目を見開いて音のする方に視線をやると、車体から小さな手が2つ、この車を傾けんと体重を乗せていた。
未来「あかんっ、登られへんわぁ…んん〜、兄さん〜」
司「未来?」
急いで手のある場所に駆け寄り、彼女を抱えて車に乗せる。
彼女はその小さな体でこの車に乗ろうとしたのか、息を切らしてこちらに歩いてきた。
司「どうしたんだい?未来」
未来「兄さんはいったんだまっとって!うしし、琴寧ちゃんてお姉ちゃんの事?お礼がいいたいねん!」
なんだかませた様子の妹に司が傷付いた表情を浮かべる。
琴寧はその表情に吹き出した。
『くっふふっ、司…』
未来「ありがとう、琴寧ちゃん。」
何たる予想外。
何も話して無いはずなのに、彼女に抱き締められて、琴寧がしどろもどろになる。
その表情にまた、司が吹き出した。
司「琴寧…ふふっ、あぁ、ごめんね…」
『司…』
未来「千空さんから聞いてん。琴寧ちゃんが私が寝てる間にめっちゃ頑張っとったって。だいすきや、琴寧ちゃんのこと」
鼓動が聞こえる。
彼女の声が、聞こえてくるのに、酷く感動して。
『おはよう、未来』
私はまた、挨拶をするんだ。
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栗子(プロフ) - あんあんねこさん» ありがとうございます!💕💕お話のスピード遅くて主人公がどうなっていくのかのろりのろり更新ですけど気長に待ってくれると嬉しいなっ☆💦めっちゃ嬉しいです!頑張ります!!(ง •̀_•́)ง (9月24日 1時) (レス) @page41 id: 117de47d08 (このIDを非表示/違反報告)
あんあんねこ(プロフ) - この作品本当に大好きです!!!!主人公がどうなるのか、、、!!!めちゃくちゃ楽しみです!!作者様のペースで頑張ってくださいっ!!!!!!!!! (9月23日 12時) (レス) @page40 id: 3021c16fe7 (このIDを非表示/違反報告)
栗子(プロフ) - 幸子さん» きゃー!✨👏嬉しいけど体調には気を付けてくださいね!?ありがとうございます💕最近出せない日多いから頑張りますね!💪 (9月21日 19時) (レス) id: 117de47d08 (このIDを非表示/違反報告)
幸子 - 夜更かしして全話読みました!最高です!!続き楽しみにしてます( *´꒳`*) (9月21日 16時) (レス) @page38 id: b07e9edb38 (このIDを非表示/違反報告)
栗子(プロフ) - ナナさん» コメントありがとうございます!!頑張ります!🔥 (8月31日 13時) (レス) id: 117de47d08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:栗子 | 作成日時:2023年8月23日 21時