Secret (ページ9)

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Ⅸ ページ9

北斗side

あの日、Aと会う予定だった日。

俺は約束通り、いやなんなら少し早く待ち合わせ場所に着いて喫煙所で煙草に火をつけていた。

そしたら隣に見た事ある女性が俺の隣に座って煙草を持っていない方の手に手を重ねてきた。

『なんだよ、お前かよ』

「なにそれ、冷た」

『何年ぶりだっけ、亜優に会うの。』

亜「んー、別れて2年経つから2年じゃない？」

そう、こいつは俺の元カノ。金銭関係で揉めて、2年前に別れた。

『お前、子供いんのに煙草吸ってんのかよ。』

亜「悪い？シングルマザーって大変なの。」

『……ごめん』

亜優の子って言うのは、俺との子。

亜「それで、あんたはこんなとこで何してるの？」

『彼女と待ち合わせの時間まで暇潰し。』

亜「彼女、ね。幸せになりなよ。」

そう言って虚しい空気を残して亜優は口紅の着いた煙草の灰を落とし先端を潰して喫煙所を出ていった。

でも俺は何故か亜優の事を追いかけて抱きしめていた。人の目など気にせずに。

『ごめん。幸せにしてやれなくて。』

亜「今更何よ、彼女のとこ行かなくていいわけ？」

『ん、ほっとけねえよ。そんな辛そうな顔の奴』

そして何時だったかな。Aに連絡するのを忘れたのに気づいたのは。

次の日からAの既読はつかないし通話も拒否されていた。

そしてやっとすれ違えて声をかけても逃げられて、挙句の果てに知らない男に連れていかれて。

俺ってなんでこんなに酷い男なのだろうか。

でもAで頭の中がいっぱいなのには、間違えなかった。