きみわずらい。2

雫。 abkj←fk ページ42

ぽた。ぽた。



はちみつを溶かしこんだような瞳からまた一つ一つ雫が零れて。



弾けて。





つい、手が伸びた。






……俺が掬ってあげなきゃ。なーんて。



思ってたのに。











収録後。



人気のない目立たない場所で、彼は1人蹲って、膝をかかえてた。



「こう……」



声をかけようとしたその瞬間。


俺とは反対側から人影が現れて、思わず身を隠してしまった。




「……こうじ。」


小さくなった彼の体をふわっと上から包み込む、影。



「…あべちゃ……」


顔をあげた康二の瞳からはぽろぽろと宝石が零れおちる。


……こんな時なのに、綺麗だな、なんて思ってしまった。



阿部ちゃんの手が優しく彼に伸び、そっと宝石を拾い上げた。


「大丈夫だよ、どんな時も俺がいるからね。」


負けた、なんて。

いや、別に競ってたわけじゃないんだけど。



なんか、割と1番一緒にいたのは俺だった、なんて自惚れてたからかなぁ。


そういや、2人は昔から仲良かったっけ。


2人がお互いにしか見せない顔があって。


2人だけにしか出せない空気があって。



「……羨ましいのかな。」


メンバーの中でも頼ってくれる方というか。
そういう役目は俺だと思ってた、というか。



でも。




「……阿部ちゃんには敵わないなぁ……」


あんなに優しく笑うんだから。



「いつもありが…と」

「ふふ、こうじを守るのは俺の役目だからね。」

別に、恋愛的に好きなわけじゃない…はず。

なのに、何故こんなに心がぽっかり空いてしまった気がするのか。




別に阿部ちゃんと康二が付き合ってるわけでもない。

なーんて必死に言い訳探してる時点で答えなんてとっくに出ていて。





「ありがと、阿部ちゃん、大好きやで」

可愛いアイツは、いつもみたいにおちゃらけてる感じも全くなくて。


「…あんな顔、見たことない」

阿部ちゃんのあんなに誰かを愛おしく思う顔も康二のあんなに安心しきった顔も。



見たことない。








見たくない。



逃げるように2人に背を向ける。





…もし、俺が今泣いたら。

君は、俺の涙を拭ってくれるのだろうか。








ぽたり、ぽたり。

雫が零れて。


弾けて。

地に落ちて。




…消えた。




#
めちゃくちゃお久しぶりです…。
あまりにも忙しすぎて更新ほぼ出来てないのですが、変わらず
読んでくださってる方ありがとうございます…！
更新頻度高く出来るよう頑張ります、、！

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している


←あとすこし。 jrkj

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す