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「ずっと、君の中にいたんだぜ。これでも出来るだけ、君の為に、息は潜めてたつもりなんだけど」
宙ぶらりんに彷徨った、左手の人差し指。
少しだけ空を掻いて、きっと、僕の心臓＿＿を狙ったんだろうけど、心臓からは少し離れたところを、とんっ、と軽く突かれた。
……本当に、見えてないんだ。
あの日、僕の前で崩れ落ちた体は、嘘じゃない。
「悠馬君、ほんと些細なことで俺のこと思い出しちゃうんだから、ひやひやする。それでも、Aちゃんの存在がブレーキになってくれてたんだな」
それでもAと同じ、幻の色がまだ残ってくれている片目が、鋭く乱反射するようにきらめいた。
かたや聡眼、かたや失明。
Aと由羽真さん、それぞれの目を巡る運命は、分かたれてしまった。
「うちの、かわいい、かわいーい妹に感謝して。はっきり言うけど、悠馬君は所謂二重人格＿＿人格の解離手前だったんだ。君の器に、俺を真似た別の人格が宿るところだった。……言いたいこと、分かるだろ」
人格、解離。彼を真似た、別の人格。
心当たりなんてものじゃない、そんな孤独をかかえた人を、僕は知っている。
深い孤独。
縋るような思いで作り出した、それは、幻。
僕も、一星君のようになっていた？
「あの子の兄さんがどうかは、知らないけど。俺はね、あんな死に方してまで、君の中にこんな歪な残留物として漂ってたくはないの。分かってよ、早く俺の手を離して」
嫌。忘れたくない。
だって、貴方という選手は、貴方という人間は、僕の人生には、あまりにもまばゆすぎたんだ。
貴方の手を、僕は、まだ離せない。
貴方が望まなくても、僕は望んでしまうんだ。
「……あーあー、手がかかる子ほどかわいいってな。知ってたよ、まぁ、程々であってほしかったけど」
目は見えなくても、心の方はお見通し。
由羽真さんはシニカルに笑っていた。それでいて、呆れていた。
「……おっと、ついに
拒んだ、というのはきっと、僕が今の由羽真さんを拒んでしまったのだろう。
少しずつ靄がかかって蜃気楼のように溶けていく由羽真さんは、最後の最後で、僕が望んだ通りの、あどけない笑顔を向けた。
「目が覚めたところで、変わりはしないだろうけど、一応ね。……もう、
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2022年3月31日 19時
