episode245 Side M＿＿Shortly before ページ3
「私も連れて行かれるところだったんだ、英才子供センターに。そんな私を、兄が助けてくれた」
妹を守る為に、非倫理的なプログラムに実験台として協力したという、Aの兄。
彼に、光の手術費を稼ぐ為にこうして悪事を働く俺を重ねてしまったのは＿＿あまりにも醜い思い上がりだっただろうか。
しかし、それは思い上がりなんかじゃなかった。
もっとタチの悪いものだ。
「今の君と、同じだよ」
「そ、……そうかよ」
俺達と、A達。
それぞれを重ねるように、緩やかに誘導されている。
話の間やテンポ、空気に合わせた言葉の選び方。
どれをとっても絶妙だ。
Aの頭の中で、リアルタイムで弾き出され続けている最適解。
俺は一つも受け流すことも出来ずに、形を残したまま心の中へ落ちていく。誰も触れるはずのなかった奥底まで。
「だったら、……だったら、俺の気持ちだって分かってくれよ。お前の兄だってそうだったんだろ、自分の弟妹を守る為に無理することの、何が悪いんだ…！」
「じゃあ君は、一星光くんに誇れる？今の姿を」
どこか感情的なAの言葉が、どん、と鈍い衝撃を放った。
誰にも誇れないことくらい、分かってるつもりだった。
それでもこうして他人から突き付けられるとなると、訳が違う。
(責められてる、のか)
目の前が暗くなる。
体中の血液が、凍るように冷たく感じる。
Aの兄を自分と重ねたように、Aを光とも重ねてしまったようで。
まるで、光と向き合っているようだ。違う、俺の目の前にいるのは、光と違ってひねくれ者で、憎くて……
そして、光と同じで、可哀想なA。
「私は何にも縛られず、自由に。兄らしいサッカーをする兄が好きだったよ。そんな尊いものを、歪めてしまいたくなかった。しかも、それが私のせいだったなんて」
Aの目元に、じんわりと赤色が滲む。
ここで泣き出してしまったら、その涙を拭うくらいはしてあげるつもりだったのに。Aは一滴も涙を零すことはなく、いつになく真摯な表情で続ける。
「君は、弟の為なら何をしたって構わない。そんな覚悟みたいだけれど、はっきり言って迷惑なんだ。そういうの」
その言葉に隠れていたのは、嫌悪とはまた違う。
必死の懇願、心からの悲鳴。
「君の言葉を借りると＿＿私の気持ちだって分かってよ。一星充くんの弟だってきっとそうだよ。自分の兄が自分の為に無理をするところなんか見たくないって思うことの、何が悪いって言うの」
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三峰 契(プロフ) - 琥珀恋歌さん» お返事お待たせしてしまい申し訳ありません…！現在本編に集中する為、スピンオフの方は更新をお休みさせて頂いております。更新再開時にまたパスワードを公開する予定です！ (2021年4月2日 23時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
琥珀恋歌(プロフ) - スピンオフのパスワード教えてください！ (2021年3月18日 13時) (レス) id: a29e155f14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2021年2月27日 18時
