261 アイ・アクセシング・Q ページ19
純粋な力じゃ叶わないことは、もう分かっている。
だから思い切り重心を傾けて、あの隕石の射程から逃れるように一星くんの手を引いて、自分の体ごとフィールドに倒れ込ませた。
後頭部すれすれの地面が、じゅっ、と焼け焦げる感じがしたのと同時に、詰まっていた息をようやく肺から吐き切らす。
「……A、…なんで」
震えた声でそう問う一星くんと、目が合う。
先程の砂煙のせいで視界は悪いはずなのに、彼の蒼色はいつだって、鮮烈として美しい。
彼の右手と繋がったままの左手。
すぐ離してしまうのは惜しくて、空いた右手で乱れていた蒼色の前髪を整えてあげるようにくしゃりと撫でた。
「約束したからだよ。君の手を取る、って」
「……手を取るって、そういう意味で言ってた訳じゃないだろ…」
「はは、まぁね。予想外の形にはなったけれど」
私はゆっくりと体を起こせたけれど、一星くんはその気力も無さそうに、自分が横たわっているフィールドを一線、呆然と見つめたまま。
A、と。
そう呼ぶと同時に、心細そうな掌が、私の掌に縋る。
私はそれに応えようと、互いを結ぶ体温を確かめるように、ぎゅっと握り返した。
「でも、あの言葉、嘘じゃなかったでしょ。こうして、君の手を取ったんだからさ」
「……一星君、A！」
もう少し、話していたかったのが本音。
でも悠馬じゃなくても、この状況で放っておいてくれるひとはいないか、と諦めて、頭上に落ちた影の方向を見上げる。
「私も一星くんも、無事だよ。少し、ひやりとはしたけれどね」
隕石がどこから降ってくるかがはっきりと分かれば、落下地点も予想がつく。
とはいえ、蹲ってしまった一星くんを引き摺る形で逃れることになったから、予想よりもギリギリの回避にはなったけれど。
私に差し伸べられた手は取らず、チームのベンチの方へと爪先を向けた。
「私は自分で歩けるから。悠馬は、一星くんに手を貸してあげて」
「何に気付いたの、A」
腕を引かれる、まではいかなかったものの、見えない何かでこの場に引き留めようとするような声だ。
「急に、何の話かな」
「今まで彼のことは“一星充くん”、って呼んでたじゃない。
それは確かに、正しい目の付け方だ。
重たく、仕方なく後ろを振り向けば、まるで勝ち誇ったかのように、楽しそうに悠馬は続ける。
「この子がどっちか、分からなくなっちゃった？……それとも」
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三峰 契(プロフ) - 琥珀恋歌さん» お返事お待たせしてしまい申し訳ありません…！現在本編に集中する為、スピンオフの方は更新をお休みさせて頂いております。更新再開時にまたパスワードを公開する予定です！ (2021年4月2日 23時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
琥珀恋歌(プロフ) - スピンオフのパスワード教えてください！ (2021年3月18日 13時) (レス) id: a29e155f14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2021年2月27日 18時
