episode259 Side M ページ17
(＿＿助けて、兄ちゃん……！)
俺の心には、あの日の光が離れていない。
俺は何があっても、光を裏切れない。
いつか光とサッカーをする為に、俺は此処にいるんだ。
＿＿“君は、弟の為なら何をしたって構わない。そんな覚悟みたいだけれど、はっきり言って迷惑なんだ。そういうの”
刹那。無意識と意識の間。
覚悟が決まる数秒前に脳内を奔った、バチンッ、と毛の先までも痺れるようなフラッシュバックだった。
＿＿“あんまり、ひとりで頑張り過ぎないでよ。君はひとりじゃないんだから”
やめろ、やめろ。頭の中にまで入ってくるな。
何で今更になって、こんな鮮明に思い出してしまうんだ。
組織に魂とプライドを1ミリグラムも残らず売り払ってから、誰もくれなかった優しい言葉。
今までに知らない訳じゃない、かつては知っていたからこそ、懐かしいそれに手を伸ばしてしまう。
＿＿幸せだった頃の記憶に、縛られてる。
そこに戻りたいと足掻けば、思いに逆らわれるように、ずるずると引き離されていく。
あの時Aに打ち明けた言葉は、嘘じゃない。
言うはずじゃなかったのに、あれだけ無理矢理心を覆っていた鎧が、優しさに溶かされて、つい口から零れたんだ。
今までずっと光しかいなかった、光以外の介入を許さなかったはずの俺の心に＿＿いつしか、Aが現れていた。
「ここは守るよ、一星君」
「……っ、野坂、悠馬…」
苦悩も悪意も何も知らないで、野坂は俺の目の前を走っている。
頭を狙えば、一発。どんな策も通用しない、厄介な司令塔を。
(俺といい、野坂といい。……人って、案外簡単に壊れるんだな)
これ以上、失敗は出来ない。
俺が何を
跳んだ野坂を追うように、俺も跳ぶ。
それは今までにないくらい、長く感じた数秒間だった。
だって、再びフィールドに足を付ける頃には、俺の運命は決まっているんだから。
光、もうすぐ助けるから。もう、心配しないで。
ゆっくりと足を振り上げて、狙いを定める。
そして再び、フラッシュバックは訪れる。
＿＿“じゃあ君は、一星光くんに誇れる？今の姿を”
……光を、助ける。
誰かの選手生命を奪おうと企む俺が。
このことを光に知られたくないと願う、俺が。
その時、Aの言葉の意味を。
そして何より、光を「守る」という本当の意味を。
＿＿こんな時になって、知って、しまった。
「……選んだんだね。本当の自分と、向き合うという選択肢を」
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三峰 契(プロフ) - 琥珀恋歌さん» お返事お待たせしてしまい申し訳ありません…！現在本編に集中する為、スピンオフの方は更新をお休みさせて頂いております。更新再開時にまたパスワードを公開する予定です！ (2021年4月2日 23時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
琥珀恋歌(プロフ) - スピンオフのパスワード教えてください！ (2021年3月18日 13時) (レス) id: a29e155f14 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2021年2月27日 18時
