202 インサイド・ネヴァーランド Side H ページ9
見慣れたドアの向こうには、ここ最近テレビで見慣れた人が立っていた。
(花綺更、……Aさん)
人の第一印象って、例えば可愛いとか、格好良いとか。あるいはいい人そうとか、ちょっと怖いとか。
そういったストンと納得の行くような感想だと思う。
でも彼女を一目見た時、何故か真っ先に“不思議だ”って感じた。
今まで会ったことなんて無いはずなのに、どこか懐かしい気持ち。
何の色、と表現するのも難しい不思議な瞳が、一際大きく見開く。簡単に、ふうっと吸い込まれてしまいそう。
「……一星、充くん……？」
その彼女がいかにも咄嗟といった様子で呼んだのは、兄ちゃんの名前。
「え？……ああ、よく似てるって言われます。でも」
何故か不安そうな顔を見つめながら、訂正するように自分の名前を告げる。
「初めまして。俺は、一星光です」
示し合わせたように風で一瞬舞い上がったカーテンレースの奥に、2つの瞳の輝きだけが朧に浮かぶ。
ただ再び風が止む頃には、スニーカーを軽く鳴らしながら、ベッドの方へと歩み寄って。
「……そう。初めまして、一星光くん。花綺更Aです」
俺の顔、というより、目を覗き込むようにして屈み込む。
想像よりもずっと近づいていた距離に驚いて、思わず声をあげてしまった。
「わ……っ！」
それを面白がって、くすくす。
口元に手を当てて笑いながら後ろにステップを踏んで、少しだけ彼女が遠ざかる。
何故か無性に手を取って引き留めたくなったのは、どうして？
躊躇いを何とか飲み込んで、話題と意識を摩り替えるように大きな手荷物を指差す。
「荷物、良かったらこっちの机に置いてください。重たそうですね」
「ありがとう、そうするね。これは、君に渡すものだから」
「……そんな、ありがとうございます。こうして来て下さっただけで、貴重な時間を頂いてしまっているのに」
俺に渡すもの、と言っていた。
お見舞いにしても随分多い、兄ちゃんだってこんなに何かを持ってきたことはなかったと思う。
「えっと、」
「敬語じゃなくていいよ。話しづらいでしょ」
別に受け取ることを断ろうとした訳じゃない。
でも、気を遣わせてしまうのは申し訳ない。
そのことを伝えようとしたのと同時に、逆に彼女の方から“気を遣わないで”と言われてしまう。
会話のテンポが独特で、ちょっと掴みづらい。……やっぱり不思議だ。
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三峰 契(プロフ) - かなりさん» コメントありがとうございます！のんびり更新ですが、これからも頑張ります！ (2020年10月9日 14時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
かなり - これからも体に気をつけて頑張って下さい！ずっと応援しています！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 続編おめでとうございます！私は、この小説が大好きでとてもドキドキする小説です！！私、野坂君が大好きなのでまだこの小説を続けて欲しいです！！ (2020年10月4日 19時) (レス) id: 517f37b5b5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2020年10月1日 12時
