episode57 ページ10
「あの時、私の周りには複数の反射光が巡らされていました。目に反射光を直接当てるより威力は弱まりますが、私の目には充分な痛手。まるで地雷原と化したフィールドで動けなくなってしまっただけです、情けない話だけれど」
悠馬が計算を頼りに確実な一手を取りに行くという考えなら、私は感覚を頼りに多少の賭けにも出るという考えだと思う。
しかし目を使った賭けには出られても、目を賭け金に出すことは出来ない。
例え勝率が99%の賭けだったとしても、この目に危険が及ぶのなら、私はその勝負からは降りてしまうだろう。
この目だけは、誰にも傷付けられたくなかった。
「でも敵選手がいざ迫った時、動きが確かに鈍った。その時、スライディングはあくまでも囮で、狙っていたのは目だけだったことにようやく気付けたんです」
落ち着いて考えれば、あれだけの大掛かりな光の檻を作っていた時点で、狙いは目だと分かるようなものだったのに。
敵の狙いにあそこまで気付けなかったのか。
それとも選手の命である足を囮にされていたという事実を受け入れることを、脳のどこかが拒んでしまったのか。
話の一段落。ようやくの思いで吐き出せた息が、あらゆる暗い感情で薄暗く澱む。
「……A君が軽傷で済んで、心底安心しています。正直、あのような事態に見舞われるのは想定外でした。てっきりあちら側も、その目を欲しているものだとばかり」
その溜息ひとつで全てを察した様子で、監督はいつもと違い、穏やかな口調で話し出した。
私の考えがそこまで至っていることは想定されているらしい。
あちら側。この大会の運営、もしくは運営を操っている組織。その存在を仄めかしながらも、明言はしないまま。
「キミの目がどのような能力を秘めているのか、知らないのでしょうねぇ。そのかけがえのない英知を潰してしまおうだなんて、無知とは恐ろしいものです」
このひと、本当に曖昧な話し方しかしない。
のらりくらりとした振る舞いなのに、ここまで真意に踏み入ることができないのは最早一種の恐怖だ。
「……”アテナの羅針盤”、このプログラムの完成は最後まで叶わず、実現化と発表の前に畳まれました。なのにどうして監督は知っていたんですか」
「それは、大事な選手のことですから」
震える程の緊迫を押さえながらやっとの思いで聞いたのに、返ってきたのはいまいち噛み合わない答え。
それに加えて、”入手ルートは極秘ですが”と悪びれもなく笑われてしまった。
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三峰 契(プロフ) - かなりさん» はじめまして、コメントありがとうございます！のんびりですがこれからも更新頑張りますので、よろしくお願いします！ (2020年3月10日 21時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 続きが気になり過ぎて待ちどうしいです。これからも頑張ってください。 (2020年3月10日 15時) (レス) id: b69d3c39c6 (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭〜すずらん〜(プロフ) - 始めまして。麗乙女のゆううつのパスワードを教えてもらいたいです！ (2020年2月3日 16時) (レス) id: b5347077cc (このIDを非表示/違反報告)
契(プロフ) - 匿名さん» 初めまして。展開は決まっているのですが、野坂さんと花綺更ちゃん、頭脳派という設定の 2名のやりとりをどのようにまとめるかで長く手こずってしまい…！なので体調は万全です！ご心配お掛けして申し訳ありません。これからも楽しんで頂ける作品を目指して頑張ります！ (2019年12月10日 0時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 初めまして。以前から楽しく拝見させていただいております。しばらく更新が無かったので体調を崩されているのかと心配しておりました…。花綺更さんと野坂さんの今後をハラハラかつワクワクと今後も楽しみにしております…！ (2019年12月8日 5時) (レス) id: dfef9e7ff2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：三峰 契 | 作成日時：2019年10月6日 8時
