episode52 ページ5
灰崎くんと吉良先輩が個人プレイを好んでいた理由のキーは、”勝利”という目標への思いの強さ。自分の実力を理解して、誇りを持っているからこそ”自分なら決められる”と1人で切り込んでいけるから。
その思いが引き合うから、利害の不一致が起こる。
勝手かも知れないけれど、私はそう解釈している。
それなら2人の中に”チーム内の邪魔者の排除”という目標を与えて、灰崎くんと吉良先輩の利害を一致させたらどうなるか。
答えはあまりにも簡単。
現に前試合の『ペンギン・ザ・ゴッド＆デビル』でも証明されたようなもの。
「おらよっ！」
「ぐっ……！」
「くくっ、ナイストラップ！」
手を組むことがないはずだったふたりが交わしたボールに巻き込まれて倒れ込んだ一星充くんの姿を見て、言葉を失くす。
「……鬼道先輩」
神と悪魔。運命すら翻弄してしまう怪物の名を受けたふたりを、あのひとはコントロールしてしまった。
どこまでが計算なのか、私の頭じゃ鬼道先輩の考えを引き抜くことなんて不可能だ。
それでも、この手段はあまりにもリスクが高過ぎる。これだけが確か。
「一星の排除に関しては、俺とあいつらに任せていれば良い。お前にこれ以上無理をさせるつもりはない」
「鬼道先輩、でも」
言い返そうとした言葉が引っ掛かった舌の
「……でも、あの子は仮にも国家が定めた親善大使ですよ。相手国に喧嘩を売ることに繋がりかねません、サッカーの影響力は大きいんです」
今の状態では国家友好親善大使なんて称号も信じられるような代物ではない。
なのに、私の持ち合わせの中で説得の材料としてはこれが唯一私情を挟まない、傍から聞いて一番最もらしいものだから。
「このままだと鬼道先輩にも危険が及びます。あのふたりを止めて貰えませんか」
視線は逸らせない。もしここで逸らしてしまったら、その目に全て見抜かれてしまう気がした。
ぶつかり合った視線から迸った冷気が、眼球を掠めていく。
「……それは、できない」
鬼道先輩が静かに見据えた先、敵チームのキャプテンであるサタン・ゴールの様子が豹変する。
「＿＿我等、刻印の意志のままに」
「俺にはチームを守る責務があるんだ。その為なら、悪人になることも厭わない」
首筋に浮かび上がった、青白い星の光。
ゴーグルの奥に隠した、真っ赤な眼光。
対比的な2色。その鋭い彩度へそれぞれ込められた正義に、ぢりぢりと目が眩む。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 218人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
三峰 契(プロフ) - かなりさん» はじめまして、コメントありがとうございます！のんびりですがこれからも更新頑張りますので、よろしくお願いします！ (2020年3月10日 21時) (
レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
かなり - 続きが気になり過ぎて待ちどうしいです。これからも頑張ってください。 (2020年3月10日 15時) (レス) id: b69d3c39c6 (このIDを非表示/違反報告)
鈴蘭〜すずらん〜(プロフ) - 始めまして。麗乙女のゆううつのパスワードを教えてもらいたいです！ (2020年2月3日 16時) (レス) id: b5347077cc (このIDを非表示/違反報告)
契(プロフ) - 匿名さん» 初めまして。展開は決まっているのですが、野坂さんと花綺更ちゃん、頭脳派という設定の 2名のやりとりをどのようにまとめるかで長く手こずってしまい…！なので体調は万全です！ご心配お掛けして申し訳ありません。これからも楽しんで頂ける作品を目指して頑張ります！ (2019年12月10日 0時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 初めまして。以前から楽しく拝見させていただいております。しばらく更新が無かったので体調を崩されているのかと心配しておりました…。花綺更さんと野坂さんの今後をハラハラかつワクワクと今後も楽しみにしております…！ (2019年12月8日 5時) (レス) id: dfef9e7ff2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：三峰 契 | 作成日時：2019年10月6日 8時
