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episode25 Side S ページ25

「あんたの目は一体、あいつの何を見たんだ」

先程とは別人のようだ。思慮深く(かげ)った瞳を数度瞬かせる。
しかし此方を酷く焦らした末、彼女は口を開く前に、背後の時計を指指した。

「もう、朝食始まってますよ。話は10分で済ませるようにって約束したの、西蔭さんだったのに」

「……ここで話を切る、なんて言うつもりないだろうな」

これだけ回りくどい話し方をしてくれたくせに。”ふざけるなよ”と怒りが泡立って込み上げた瞬間、それを戒めるかのようにドアが3度、トントントンと控えめに叩かれる音が鳴る。

「……とりあえず、この話は」

「おい、待て」

本人はあまり自覚はしていないらしいが、Aは視覚に優れた代わりにその他の感覚がかなり鈍い。小さなノックにも気付かなかったようで、平気そうに話を続けようとしていた。

部屋は防音になっているが、それは完全なものではない。話も話であることから、その口を思わずやや乱暴に手で塞ぐ。



「__おはようございます、一星です。食堂に来ていなかったみたいなので、こうして呼びに来たんですが……ご迷惑じゃなかったでしょうか」

まさに『言葉通り』。話が切って遮られてしまった。
Aが、そっと息を詰める音が聞こえる。

……なんてタイミングだ。よりにもよって訪れたのは、今ちょうど話にあがっていた一星だった。

朝食の時間に姿を見せない俺達に気を利かせてくれたらしいが、先程の話を聞いてからではその親切すら素直に受け取れるはずもない。

目を()れようとするが、視線は合わなかった。Aは(ぜんまい)が切れた機械仕掛けの人形のように、じっとドアを見つめたまま。

「おはよう。お迎えありがとう、すぐ行くね」

その冷静な表情は1ミリたりとも変えず、口だけを動かしてドアの向こうへ返した。

そんな顔をしていることは、ドアを挟んだ向こうには伝わらない。何も知らないあいつの”分かりました、それなら待ってますね”、と快活でありながら利口ぶった返答に、彼女は詰めていた息を短く吐き出す。

「この続きは、いずれ話します。ただ、あの子には気を付けていて。此方の思惑は、決して悟られないように」

部屋を出る寸前、そのたった一瞬の目配せの合間。
怖いくらいに鋭く澄んだ何もかもを見通してしまう彼女の目に、どこか子供のように(おび)えるような色が僅かに混じるのが見えた。

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(プロフ) - 翡翠さん» 初めまして、第一幕を最後まで読んで頂きありがとうございます!ゆっくりスピンオフの方も進めていきたいですね、本編とは違った雰囲気の3人を書けたらなと思っています!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ういさん» 初めまして、第一幕に最後までお付き合い頂きありがとうございました!沢山ある作品の中で、ういさんの楽しみになれていることが作者としてとても嬉しい限りです。お気遣いまで本当にありがとうございます、引き続き更新頑張りますね!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 裕大@受験生のため低浮上さん» 初めまして、最初から読んで頂きありがとうございます!テレビ電話越しや西蔭さん経由でもあの甘やかしようなので、日本代表合流後は更に!と書いている本人もドキドキしていたりします……!これからもお付き合い頂けたら嬉しいです!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - アオさん» アテナの羅針盤、響きがそっとお気に入りです。笑 第二幕では野坂さんと主人公の出会い、過去の関係、主人公の目が目覚めた過去に少しずつ触れられると思いますので、楽しんで頂けたら嬉しいです! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 初めまして!とっても楽しく読ませて貰っています!王帝月載宮スピンオフ楽しみにしてます! (2019年10月6日 0時) (レス) id: 0bbffb7c2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月16日 12時

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