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episode12 ページ12

豪炎寺先輩の怪我は、思った以上の重症だった。きっとこの脚じゃ、試合は続けられない。

「何があった、豪炎寺」

「……分からない。一瞬、目が眩んで」

赤く腫れ上がった膝頭を苦々しい表情で見つめながらそう答え、重たく目を伏せた。

目眩ましなんて、自然に引き起こせることじゃない。それこそ、人為的に……

『人為的』。
その言葉が浮かび、ハッとする。

絶対的信頼を寄せるエースストライカーとその彼の負傷に衝撃を受けたチームメイトから、フィールドの中にいる韓国代表達へと視界を移した。

照準を定めるように、目を薄めて視界を絞っていく……

「……Aさん、どこを見てるんですか?」

「……っ!」

とん、と肩に触れた手に気が散らされた。
視覚全てに傾けられた集中が突然途切れた反動か、プツンと電源が落ちた液晶のように視界が真っ黒になる。

「わっ、大丈夫ですか!?」

そのまま崩れ落ちそうになった体を支えてくれたのは、心配そうな表情をした一星充くんだった。

「じっと向こうを見てたので、何かあったのかと」

「なんでもない。ごめんね、こんな時に」

「……もしかして、韓国代表のチームに気になることでもあったんですか」

曖昧にぼかすような口調での返答がまずかったのか。彼は平然を装っているつもりらしいが、瞳は夜を迎え行く海のように闇が混じる。

間違いない、試合開始直前のあの表情だ。

今この場で深く関わってはいけない、そう警鐘が鳴り響く。
その内心を探られてしまわないよう、隠し切れていない彼の闇に何も気付かないふりで首を振り、チームの中へと再び入っていくことにした。


戻る最中にそっと後ろを振り返る。
ペクの足元の眩い光を、私の目が捉えた。

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(プロフ) - 翡翠さん» 初めまして、第一幕を最後まで読んで頂きありがとうございます!ゆっくりスピンオフの方も進めていきたいですね、本編とは違った雰囲気の3人を書けたらなと思っています!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ういさん» 初めまして、第一幕に最後までお付き合い頂きありがとうございました!沢山ある作品の中で、ういさんの楽しみになれていることが作者としてとても嬉しい限りです。お気遣いまで本当にありがとうございます、引き続き更新頑張りますね!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 裕大@受験生のため低浮上さん» 初めまして、最初から読んで頂きありがとうございます!テレビ電話越しや西蔭さん経由でもあの甘やかしようなので、日本代表合流後は更に!と書いている本人もドキドキしていたりします……!これからもお付き合い頂けたら嬉しいです!コメントありがとうございました! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - アオさん» アテナの羅針盤、響きがそっとお気に入りです。笑 第二幕では野坂さんと主人公の出会い、過去の関係、主人公の目が目覚めた過去に少しずつ触れられると思いますので、楽しんで頂けたら嬉しいです! (2019年10月6日 8時) (レス) id: be32126b2e (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 初めまして!とっても楽しく読ませて貰っています!王帝月載宮スピンオフ楽しみにしてます! (2019年10月6日 0時) (レス) id: 0bbffb7c2b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年8月16日 12時

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