表と裏。Part2【リレー小説】 (ページ7)

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48話.不完全のお嬢様/RST ページ7

眠る人物を背負った赤い髪の少年と、生徒会長率いる表舞台のヒーローに挟まれるようにある場に、未だ圧倒的なる覇気を纏う彼女は生徒会長の彼と話を続ける。

　「間違う？ ……その者は校則を破った。それに対して話をつけるのは間違いか？」
　「ハッ！何もかもわかっていない餓鬼が権限を持つと大変だな」
　「なんだと……」

　余裕のある彼女に対し、青筋を浮かべ怒る彼。
　玉葱頭の少年は密かにこう思った。この二人の間にいなくて良かった、と。

　「話をつけるだけならば、何故貴様が動かないんだ？校則違反など虚言にすぎないからだろう」

　挑発するかのように片手を前に出し、腰にもう片腕を添える。
　そうすれば一つの静寂が生まれ、お互いの覇気同士がぶつかり合い、辺りを威圧する。
　電撃のようにその場にいる者の体内に直接圧を与えれば、腰を抜かす者、強者に対する笑みを浮かべる者、そもそも事態が飲み込めていない馬鹿が現れる。

　「ジンペイ。今すぐ彼女を私に渡せ」

　痺れを伐らしたのか、彼はまるで物でも貰うかのように手を翳しては赤髪の少年に受け渡すように云う。
　彼女はそれに焦ったのか否か、姿勢を低くし、重心を下げれば彼に蹴りを食らわそうと片足を振るう。
　例え彼女が完璧と敬えられようが、所詮は女性、男性との力の差は歴然だ。
　ただの体格の良い男性ならば話は変わっていたかもしれないが、表のヒーローとなるとそうもいかず、彼は即座に変身し、彼女の蹴りを受け止める。

　彼女は小さく舌打ちをしては、軽い身のこなしで元いた位置ちょうど二人の間に戻り、覚悟を決める。
　屈んでいた姿勢をなくし、俯いたままその場に真っ直ぐ立てば腰から取り出したナイフで自身の腕を斬る。
　その異常と云える行為に驚く者が大半だが、警戒する者もそう少なくはない。

　泥のように彼女の頭から赤い血が流れては、それが顔を覆い尽くすその前に何とも美しくおぞましい色に変化し、後ろ髪があったはずのそこにも同じような色の何かが現れる。
　腕から流れる血が地面に付くその瞬間、血だったそれは黒く染まり、彼女をそこにいる者全てを囲うように黒い雫がいくつも浮かび上がる。

　やがてそれらは大いなる音が彼らの耳に届く前に爆発する。
　小さな爆発ではない。花火のような範囲を誇るそれは、風圧も凄まじく、廊下の壁と云う壁を破壊する勢いだ。
　それら爆発が終わってもなお、彼女は不完全な変身を続ける。
　風圧と共に爆発音は響く。