88話. とても胃が胃痛で痛い ページ47
「感傷に浸っているところ悪いが、戻った訳を説明しろ。まさか無いとは云わないだろうな」
彼女らが余韻に浸り、感激の涙を流しているその懐に刺すように鋭い視線と落ちた声を発すれば、流した涙を拭い、お嬢様に楯突くように小さいながらも堂々と立ち上がる。
「……えっと」
「待って！ ラビちゃんまだ戻ったばっかで辛いかもしれないから私が説明する。いやでも、ラビちゃんが自分で話したいなら引っ込んでるケド……」
最後だけやけに自信なさげに声を曇らせたツインテールの……そう、ノエルさん。彼女はラビさんを庇うように腕をわずかに広げれば、凛とした声を放つ。最後は除きますよ。
そして、大変申し訳ないのですが私は今、お嬢様に殴られた部位がとても痛くてなんにもできません。声すら発したくありません。怨念でも籠っていたんでしょうか、なんて。
さて、彼女は訳を話していきます。こうなってしまった経緯もとい彼女の過去、そしてそれの解決を。
一通り話し終えた彼女は一つ、小さな息を溢します。
ですが、どうにもこうにも、お嬢様は納得していない……ない、いないような顔付きです。また殴られますか？ ねぇ、もう嫌ですよ。変な汗もほら、出てきちゃいますし……。
そんな私の私のための心配を余所に、お嬢様はラビさんに近付いていき、ノエルさんを無理矢理押し退けば、彼女の目の前に立ちます。
ノエルさん、本当に申し訳ないです……。
「憎くないのか？」
「……え？」
「良いように扱われて憎くないのか、と聞いているんだ。答えろ」
「憎いかどうかなんて……お姉ちゃんが凄いのは事実だし、それに追い付けないのは私の落ち度だから仕方ないよ。けど、私が凄くなくたって皆がいるから、その……憎いとかはないかな」
兎のように可愛らしく、少し困ったように笑いながら、彼女はそう返す。それが彼女なりの結論でしょうが、どうにもお嬢様は……不満げです。とっても不満げです。
ほら舌打ちまでした。
「そんな結論で解決したつもりか？」
「うん。私はこれで良いの、お母さんとお父さんみたいに私のことを蔑ろにしないでくれる友達がいるから、それで良いの。これが私の幸せなの」
「姉にも両親にも固執し、次は仲間か」
「固執なんてしてない」
「いいや、お前は肉親に固執し、仲間にも固執しようとしている」
「……お姉ちゃんに固執していたかもしれないけど、お母さんにもお父さんにも固執してない。してたらきっと、私はY学園に居ないよ」
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作者名：YSP裏クラブ一同 x他2人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2022年8月17日 18時
