85話 雪兎/Chiffon ページ44
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家にいると、なんだか苦しい。
初めてそう思ったのは、5歳の時だった。
お母さんとお父さんは完璧主義だった。
なんでも自分の思い通りにしたがる、そんな人たちだった。
それは2人の娘___私とお姉ちゃんに対しても同じだった。
私が物心ついたときにはもう、2人のの関心はお姉ちゃんに向いていた。
たぶん、私と比べて「立って歩けるようになるのが早かった」とか、「言葉を話せるようになるのが早かった」とか、そんな理由。
それでも、お姉ちゃんがそうしたように5歳から算数の勉強を始めた。
少しでもお姉ちゃんに追い付いて、お母さんとお父さんに褒めてもらいたくて、必死に勉強した。
でも…全問正解のたし算のドリルを見せて帰ってきた言葉は冷たかった。
「ラムはあなたと同じくらいの時、もう引き算を解いていたわよ?」
「こんなに時間をかけて、できたのがこれか。」
私は人生で最初のステップを踏み外した。
心が少し凍った気がした。
「___とにかくっ!ラーちゃんは汚くなんかないのっ!!
分かった!?」
シアンくんは、ビシッとこちらを指さしてそう言った。
口の中に、ほんの少しあまい味が広がっている。
それは暖かくて、もう何年も凍りついたままの心を溶かしてくれているような気がした。
『ほん…とうに、?わたし…きれい…?』
「本当!綺麗!」
『でも…この耳…気持ち悪くないの、?』
「気持ち悪くなんかない!!ラーちゃんはラーちゃん!」
そう言われた途端、視界が滲み、目から雫が溢れてきた。
これまでとは違う、暖かい涙。
お母さんはこの耳を見た途端、怯えたような目でこちらを指さし「化け物…っ!!」と叫んだ。
お父さんは変わり果てた私を見て、冷めきったような目でこちらを見て「お前は俺の娘じゃない」と吐き捨てた。
お姉ちゃんはそんなこと言わなかった。
でも、お姉ちゃんが優しく抱きしめてくれても、私にかわいいカチューシャを作ってくれても、足りなかった。
私には愛が足りなかった。
でも、この2人は…いや、裏クラブのみんなは、私のことを認めてくれるの?
からっぽの
私はめいいっぱい腕を広げて、目の前にいる2人に抱きついた。
『信じて、いいかな』
何も無い空間に、眩い光が溢れた。
そして___
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作者名:YSP裏クラブ一同 x他2人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時:2022年8月17日 18時