82話 声 ページ41
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目を開けると、そこはもう屋上じゃない。
暗くて先の見えない無の空間。
行く宛てもなく歩いていると、何処かから複数人の話し声が聞こえてきた。
進む度に段々声量が大きくなっていく。
「お姉ちゃんの方が優秀ね」
突然、穏やかそうな女性の声が響き渡る。
辺りを見回すと、そこには母親らしき人と下に俯く白髪の小さな女の子の映像が映し出された。
これってもしかして……ラビちゃん？
ってことは、ラビちゃんに向かって何か言ってるあの女性はラビちゃんのお母さんってこと…？
「どうしてあなたにはできないの？」
「お姉ちゃんの参観日だから行けないわ」
声は穏やかそうな感じがするのに、言葉が氷のように凄く冷たい。まるで胸を氷柱で突き刺したような感覚がする。
「ラムは偉いな」
「ラムを見習え」
この威厳のある男性の声はお父さんだな。
ラム……さっきラビちゃんのお母さんがお姉ちゃんとか言ってたけど、もしかしてお姉ちゃんの名前なのかな？
淡々とした声色でキッパリと言い放つその姿は、
「塾行ってるなら、解けて当たり前じゃん」
「勉強出来る自慢？」
次に流れてきたのは複数人の小学生の声。
ラビちゃん頭いいなって思ってたけど、それって塾に通っていたからなのか。
……ってか、さっきから思ってたけど
「なーにがお姉ちゃんの方が優秀ね、見習え、勉強出来る自慢よ！！ラビちゃんは元々優秀だし、先輩の私でも見習わなきゃいけないところあるのに！！」
「そうそう！完璧に出来る人間なんていないのに、この親は一体ラーちゃんに何を求めてるんだか……」
「勉強だってそう！あの性格をしたラビちゃんだよ？いつもオドオドしているラビちゃんがだよ！？自分から偉そうに勉強自慢するわけないでしょ！」
「エルちゃん、流石にそれは言い過ぎ」
とりあえず自分達の鬱憤を叫ぶだけ叫んで発散し、ラビちゃんを探すべく再び歩き始めた。
暫くすると、目の前に人影が。
それは紛れもなく、私達が探していた親友トリオの1人、ラビちゃんの姿だった。
きっと過去の出来事を思い出したのだろう。己の身を守るようにしゃがんで耳を塞ぐ姿に胸が締め付けられる。
「ラビちゃん！！／ラーちゃん！！」
「……っぁ、ノエ……ちゃ……」
思い切って声をかけると、ラビちゃんは声を震わせながらゆっくりとこちらを振り向いた。
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作者名：YSP裏クラブ一同 x他2人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2022年8月17日 18時
