46話 逃走 ブドウ ページ5
詰んだ。顔には出さないが冷や汗が背中を滑り落ちる。なんなのだろうと思いながら振り返った
「えっと、黒瀬ヨミさんですか？」
1年生なのだろうか、玉ねぎのような頭の少年が恐る恐る問いかける。それに頷いて、自己紹介をするヨミ
「……はい。中等部2学年の黒瀬ヨミです。何か、御用です、」
言い終わる前に固まってしまったのは、「声」が耳に響いたから
──「ラントくん」ヨミさんが校則違反したって言ってたけど、そんなことしなさそうだけどな…
心の声がヨミに向かって流れ込んでくる。流れ込んでくる心の声を聞いた瞬間、少し後ろに後退る
「えっと、生徒会長にヨミさんを探してくれって言われて…」
その言葉で、また少し後ろに後退る
「なので、付いてきてくれませんか？」「ごめんなさい無理です！」
そう叫んで走り出したヨミ。だがそれを読んでいたかのように、回り込むジンペイ
そのままハンカチをヨミの口元に当てると、ヨミは崩れ落ちた
消えゆく意識の中、妹の様な彼女を思い浮かべる
彼女が助けに来てくれるんじゃないか、そう期待しながら
「め、ざ……ちゃん」
「とりあえず、部室に運ぼうか」
「そんなにヤバいことしたのか？そんな風には見えなかったぞ」
表が話しながら歩いていく。ヨミはジンペイに背負われている
「この先輩がそんな事するようには見えないけど……」
「どっちかと言うと、会長の方を怖がってた気がするなぁ。もしかして、個人的に何かしたとか！」
そう話す表は、後ろから近づく人に気付いていない。その人は、背負われているヨミを見た後、早歩きで表の面子を抜かし、前に立ちはだかった
「愚民共。その背中に背負っている者は誰だ。見間違いでなければ、ソイツは私の知り合いのようだが」
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作者名：YSP裏クラブ一同 x他2人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2022年8月17日 18時
