72話 魔槍ノエルは経験者 ページ31
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あの見慣れた黒いカチューシャと黒い布を見た途端、物凄く嫌な予感がした。
割れたスマホ画面を見た途端、胸が締め付けられるように苦しくなった。
「違うよね…？違うよね……！？」
自分を落ち着かせるように呟きながら人影の方に向かって全速力で走る。
どうか……どうか……
この悪い予感が当たりませんように。
「ねぇ！ねぇ！起きて！起きてよ…ッ！」
俯いているけど、この人が誰だか分かる。
だからこそ悪い予感が当たった時のことを考えたくなくて、両肩を掴んで強く揺する。
「ノエル！それ以上刺激したら…！」
「え＿＿＿＿うわあっ！！」
その子の身体から一気に黒色の靄のようなオーラが放出された。
靄のはずなのに、強風にぶち当たるような衝撃を受けて壁に背中を強く打ち付ける。
「なんで……なんで相談してくれなかったの……？苦しい時は苦しいって言ってほしかったのに…。そんなに私、頼りなかった……？」
＿＿＿＿……ねぇ、"ラビちゃん"
いつもツインテールにしている白色とピンク色のグラデーションの髪。でも今は崩れるように解けていて。
うさ耳カチューシャを付けていると思っていたのに、ラビちゃんの頭には本当にうさぎの耳が付いていて。
いつもブカブカのピンクのカーディガン着てるのに、今は着てなくて。それ以前にY学園の制服とは違う全く別物の服を着ていて。
靴も靴下も履いていない素足の方に目線を移し替えると、そこには真っ黒な靄がその子の足にまとわりつくようにユラユラと動いていた。
「あの時のノエルにそっくりだ……」
「ヒ、ヒジリ……」
絶望寸前の私の隣にヒジリがしゃがむ。
ヒジリの言う"あの時"の記憶はあまりない。でも、凄く苦しかったのは今でもハッキリと覚えている。
すると、ラビちゃんは何事も無かったかのように急に立ち上がり、無言で私達を見下ろした。
いつも不安げな瞳をしている赤い瞳が
今は闇のように真っ黒に染まっている。
「ラビちゃん、話ならいくらでも＿＿＿」
聞くよ。
そう言い終える前にラビちゃんは無表情で何処かへ去っていった。
中身が空っぽになった気分だった。
ラビちゃんのこういう姿が想像出来なかったからっていうのもあったけど、何より自分の不甲斐なさが結構心にきて……。
「ノエル、悲しんでる暇はないよ」
「……ッ、そうだよね。うん！」
ヒジリの手を掴んで立ち上がる。
そうだ、今度は私が救ってあげる番だ…！
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作者名：YSP裏クラブ一同 x他2人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2022年8月17日 18時
