71話 黒光ヒジリの感覚 ページ30
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黒光ヒジリ、先程アメリカから帰国。
久しぶりのY学園なので街を見て回ろうかなと思った矢先、私達が所属しているYSP裏クラブの1年生の子が体調不良だとノエルから聞かされた。
これでもう分かるよね?
「__それで今からお見舞いに行くと」
「そういうこと!同じクラブの子だからどのみち会うだろうし、それなら今から一緒に行って早くお近づきになった方がいいでしょ?」
ゼリーや飲み物とかが入った袋を軽く振り回しながら答えるノエル。
2年生の時から留学していた私からすると、1年生の子は初対面。何も知らない。名前を言われても誰が誰が分からない。
いや、別に文句とかはないんだけどさ……。
早々にお見舞いとか聞いたことがない。
「最近見つけたんだけどさ、こっちの脇道を通った方が早く宿舎に着くんだよ!」
「へー、少し暗いけど確かに近そうだな」
街灯はないし、夕方のせいで更に薄暗く見えるけど、Yシティの構造を考えるとノエルの言ってることは本当だ。
そうと決まれば、私達は明るい大通りから離れるように薄暗い脇道に向かって足を進めた。
「でさー、可愛くてしっかり者のラビちゃんと面白くて価値観の合うしーちゃんって子といつもいてさー!」
「はいはい……って、ちょっとあれ」
「ん?向こうになにか___」
脇道の半分を進んだあたりだっただろうか。
私達の話し声も足音もピタリと止まった。
私達のいるところから数メートルほど離れたところに壁に寄り添って蹲る人影を発見する。
大きさ的に……ノエルくらい?
「ヒジリ!急いで救急車呼ばないと…!」
「それくらい分か___ノエル、待って」
「何で!?早く助けなきゃ!」
倒れている人の元に行かせないようにする私に、ノエルは苛立ちと焦りを見せる。
違う……この人はただ倒れてるんじゃない。
前にも感じたこの感覚は……確か……。
「あれ…?このカチューシャと布って……」
前にも感じた感覚を思い出そうとする私をよそに、ノエルは自分の足元に落ちている黒いカチューシャと黒い布、画面の割れたスマホの存在に気付いて拾い集める。
「____ッ!!」
「ちょっ!ノエル!?」
じーっと観察するように見つめたと思いきや、急に蹲ってる人影の方に向かって走り出した。
何かを恐れているような真っ青な顔色で。
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作者名:YSP裏クラブ一同 x他2人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時:2022年8月17日 18時