表と裏。【リレー小説】 (ページ40)

今日:13 hit、昨日:1 hit、合計:812 hit

39話影縫クルミの壁/Chiffon ページ40

・

今日もまた、"いつも通り"の朝。

"いつも通り"起きて、"いつも通り"着替えて、"いつも通り"＿＿＿

1人のまま迎えるFST。

誰かが声をかけてきても、避けるように逃げる。

もちろん、ルコからも。

余計な情を抱かないように、見えない壁を作って。

私は、誰とも"友達"になっちゃいけなかったのだ。

私にとって。お互いにとって。

いい事なんて何も無い。

最初から、こうすれば良かったのだ。

『(でも、どこへ行こう…)』

今日は天体観測部の集まりはない。

…まあ、あったとしてもルコがいるから行かない。

『エルゼメキア様はどこにいるの…最近は風紀委員長の体を借りっぱなしなのかな』

私はとりあえす寮への道を辿っていたが、目の前に見覚えのある人影が立ち塞がった。

ルコだ。

相手が話し出す前に、180度方向転換。

全力ダッシュを開始する。

エルゼメキア様の手下の逃げ足、舐めるなよ

振り切った、と思う。

寮はダメだ。

…となると、もう私が行ける場所は一つしかない。

"あそこ"へ行こう。

私は階段を上り、屋上に出た。

そして、人の少ない所から…

ぴょん、と飛び降りた。

別に人生諦めた訳では無い。

実は、屋上には少し低くなっている箇所があり、屋上からは死角になっているスペースがある。

私しか知らない、秘密の場所。

することもないので、体育座り。

ふたつのぬいぐるみを一緒に抱きしめる。

スマホを見ると、ルコからのメッセージがとんでもない量になっていた。

ぴこん、ぴこん、と今もなお送られている。

…うるさいな。

その騒音に、マナーモードと電源オフで対抗した。

『もう、探さないでよ…』

でも、大丈夫。

この場所は私しか知らないし、他の人がここに来られるわけが無いんだから。

このまま下校時間までここにいれば、見つかることは無い。

……………と思ってたのに。

しゅた、と。

落ちてきた人影。

髪の色も、背格好も、左右で色の違う瞳も。

全てよく知ってる。

何度も見てきた。

『どうして…どうしていつも、見つけてくるの…ルコ！』

・