表と裏。【リレー小説】 (ページ36)

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35話　龍川ハクヤは華を守りたい。ページ36

「燃える、燃えるの！燃えてた！全部全部全部燃えて、消えて、何も残さなかった！遺さなかったの、何も何も！熱い、燃えてるから熱い。私も燃える！」

エーデルの、声だ。

リンから了承をもらってから
妖術を使い空間を移動する。

くそ、龍の姿ではないからスピードが微量にしか上がらん！

もどかしさを感じながら、俺は龍の姿に変わった。
周りからは、見えることはないだろう。

それを幸とし、全力で飛ぶ。

病室の前についたとき、人間に戻り時計を見れば

一分もかかっていなかった。

階段上がってすぐのところから、端まで来たんだな。

意外と、経っていない。

それなのに、こんなにもどかしいものなんだな。

大切な人が泣いてる時、叫んでるときに

傍に、いれないのは。

ガラリと扉を開けると

起き上がったヨミと、震えて泣いているエーデルがいた。

「よ、み。起きてたんだな。」
「あ、ハクヤ。ごめん、今それどころじゃ」

そう言ってワタワタとするヨミに大丈夫と声をかける。

座り込み泣いているエーデルの肩を触ろうとすれば

手を弾かれヨミをギュッと抱きしめた。

エーデル、君は何に苦しんでいるんだ。

「エーデル。」

「燃える、燃えるんだ。」

「燃えていない。エーデル、こっちを見てくれ。」

「やだ、見たくない！遺らないんだ！なにも！」

「そんなわけ無いだろう！！！！！！！！！
いい加減にしろ！！！」

予想以上に大きくなった声に

エーデルも、ヨミもビクリと体を震わせた。

「エーデル。ほら、こっちにおいで。」

出来るだけ優しく。
リンのように、俺はこの姿では妖術が使えない。

だから

「水紋、広がれ。鱗を浮かばせよ。」

俺は体の一部を元に戻した。

手に鱗が生え、前髪の中から鹿のような角が出てくる。

それは、アメジストのように輝きを放った。

こうしないと、出来ないのは情けない。

黙ってこちらを見るエーデルとヨミに微笑む。

ごめんな、これじゃないと

お前達を笑顔にできない。

「ヨミ、こちらにはあまり人は来ないのだな？」
「う、うん。でも、ハクヤ。その姿って。」
「下手すれば確実に人間になるか怨霊になるかだな。人間になれば死ぬのは他より速いだろう。
怨霊になれば、俺は自我なんて無くなるだろうな。」
「っだめだよ！リンちゃんがっ、悲しんじゃうっ！」

そうかもしれないな。

でも、それでも

「守りたいんだ。」
「え？」