表と裏。【リレー小説】 (ページ35)

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34話　月宮リンは勘が鋭いページ35

「んー、よっしょ。」

花束と果物。
手紙とぬいぐるみ。

他にもたくさんの物をバッグに入れて階段を上がる。

「大丈夫なのか………？随分と重そうに見えるんだが。」
「んーん。全く重くないの。最近、妖力の練習が増えたからかな？」
「確かに、体の負荷は先月より膨れ上がってると思う。」
「あはは…………。これ、ヨミねぇに言ったら怒られそうだなぁ。」

苦笑いを零しながら歩みを進めていく。
ヨミねぇ、黒瀬ヨミは私の姉のような存在だ。

無理をしたら、心配をかけてしまう。
それは分かってる。分かってるのだけど！

やはり、思ってしまう。

私が、癒やしの妖術をあのときに使えてたら。

ヨミねぇは、眠らずにすんだのに、なんて。

過ぎたことは変わらないけど
何度来ても、返事のこない会話は悲しくなるんだ。

ヨミねぇ、早く起きて私と喋ろうよ。

お見舞いのときに毎回言ってる言葉。

今日は、返事してほしい、な。

「……………そろそろ、病室だね。」
「あぁ、そうだな。今日は食べやすいように桃と梨をむいておいてやろう。きっと、ヨミは喜ぶと思うぞ。」
「うん。ヨミねぇと一緒にいっぱい食べよう！」

歩みを進めていけば上がる気持ち。

今日は、起きている気がする。

近づいていけば、聞こえてくる声。

これって

悲しみと、苦しみ……………？

誰の、声なんだろう。
知らない、けど。

苦しいのは、嫌だな。

患者さんかな？でも、こっちってヨミねぇだけだったよね？

……………もし、病室に着いたときにその人が泣いていたなら果物を少し置いてあげよう。

食べてくれなくても、逃げてしまおうとしても

吐き出せば、楽になるはずだから。

少しでも、前向きになれるように。

「ハクヤ、今日は果物をおおめn…………ハクヤ？」

振り返れば焦った顔で止まったハクヤが目を泳がせていた。

「ハクヤ？」
「っ！な、なんでもない。行こう。」

そう言って歩を進めるハクヤの腕をつかむ。

さっきよりも速い。腕の動きや姿勢からしても。

焦ってるね。

「ハクヤ、今日は私は帰っておくよ。」
「！？なんでだ？行くんじゃなかったのか？」
「うん。行きたい。でもね。

私、鈍くない。
だから、ハクヤが考えてること分かるよ。」

いっておいで。

そう言えば、一瞬で彼の姿はなくなった。

ヨミねぇに会うのはまた今度かな。