表と裏。【リレー小説】 (ページ30)

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29話幽霊部員の目覚めぐれーぷジュース！ページ30

裏のクラブが、また1つの爆弾発言でざわめいていた頃。
学園内にある病院では裏クラブの幽霊部員が眠っていた。

「黒瀬ヨミ」と書かれたプレートの部屋を、ガラッと金髪の少女…メザートが開け放つ。
メザートの手には、花束が収められていた
「庶民よ。今日も来てやったぞ。
完璧な私の手を煩わせるなんて、無礼だと思え。」
そう言いながらも、ベッドで眠るヨミを見るメザートはその美しい顔立ちに、焦り、恐怖、落胆を滲ませる

今日こそは起きるんじゃないか。そう期待して何ヶ月たっただろう。あの忌々しい事件から、1年がたとうとしていた。
夏休みに入る直前の出来事だった。今年は自分の国に泊まりに来て欲しい。その願いから、学園に入り、ヨミを見つけたまではよかった。

「は……ヨ、ミ……？」
頭から溢れる鮮血。足や手には擦り傷。
そして近くに、ヨミと仲が良かった男子生徒、霧隠ラントと、未だ戦いを辞めない怨霊と前YSPクラブ。
「ヨミちゃん、ヨミちゃん、起きてよ。ねえ！」
必死でヨミの体を揺する、ピンクのツインテールの少女。揺れるIT基準合格のネクタイは、少し赤色に染まっていた。
「黒瀬、お姉ちゃん……」
メザートの硬直は、長くは続かなかった。
ヨミを揺すっていた少女と執事と一緒に病院に運び、ヨミは手術を受けることになった。

手術自体は、成功した。
だが、ヨミが目を開けることは、この1年間、1度もなかった。

その日から、ヨミの病室に変わる変わる人が訪れるようになった。
そこには、第1発見者でもある、ノエルも入っていた。

人がポツリと訪れては、ヨミの寝顔をみて去っていく。時に、病室に小学生が訪れることもあった。
しかし、ヨミは目覚めなかった。
このまま、一生起きないのではないか──
そんな不安が、誰にも植え付けられた

「庶民よ。お前は勉学をどれほどやっていないのだ。もうお前は2年生になっているというのに！」

そう叫んだ後、急に泣きそうな顔になって、メザートはヨミの手を握る。
「皆がたかだかお前の為に時間を割いているというのに、未だにお前は起きやしない！

早く、起きてよっ─。黒瀬お姉ちゃん…っ」

メザートが目から溢れる涙を拭おうともせずに手を握る力を強めた。

その時、確かにヨミの手がメザートの手を握り返した

「そっかぁ、そんなに、またせてたんだね」