俺とカレカノごっこしよ【黒】

22.俺と君のカレカノごっこ遊びはあと少し ページ23

「マジ緊張した…」
はぁ、と後部座席に倒れ込むように座った目黒さんが安堵の息を吐いて
「本当にお疲れ様でした」
と声をかけた。

「これ、ありがと。Aがずっと側にいてくれてるみたいで安心した」

そう言ってブレスレットを渡してくれたから、もらったブレスレットを返した方がいい気がして手をかければ
「それはプレゼントだからいらなかったら捨てて？」
「捨てるんて！…しません」
ありがとうございます…。とお礼を言いながらも申し訳なくて。

「私お礼もできてないので…何か欲しいものとかありますか？」
「それは大丈夫。合格したらもらう予定だから」

約束したよね？と言われて

「高価すぎるものはちょっと無理ですよ！？」
と返したら
「ある意味高価かも」
と笑った。


事務所に戻ってメンバーと合流した目黒さんは、お疲れ様どうだった？めめなら大丈夫と言葉をたくさんかけてもらって、心から安心した表情をしていた。


オーディションの結果が出るのは五日後。


今まで張り詰めたように仕事をして寝不足だった目黒さんには束の間だけれどスケジュールに余裕が出て早く帰れるし午前休みが取れたりするから少し私もほっとする。

映画が決まれば忙しくなるから少しでも体を休めてほしい。

事務所で雑誌取材とか細かい仕事をこなして、私は目黒さんを家に送る。

「寄っていかない？モコも喜ぶし」
「目黒さんが早めに帰ってきてモコは喜ぶと思いますし、体休めて欲しいので早く寝たりリラックスして過ごしてください」
「俺、Aが隣にいるとめっちゃリラックスできるし、今日のオーディションのお疲れ様会してくれないの？」

彼女なのに？

そう覗き込まれて

「…もう夕ご飯決まってますか？」
「まだ、何か注文しよっか！」
と言うから

「先に帰っててください。私スーパー寄ってから来ますね」
「え！マジ！？来てくれる？」
目黒さんが嬉しそうな顔をするから頷いた。

ブレスレットのお礼だってしていないし、オーディションのお疲れ様会と聞いて断れない。

だってあと五日間だけの彼女なのだから。

「じゃあ寛いでてくださいね？」
「わかった、じゃあ楽しみにしとく」

私は目黒さんが地下エントランスに入ったのを見届けてから、スーパーに車を走らせて買い物をしてまた戻った。



「おかえり」

目黒さんとモコが出迎えてくれて

「ただいま…です」


まるで恋人が出迎えてくれたような錯覚も、あと少し。


(俺と君のカレカノごっこ遊びはあと少し)

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