俺とカレカノごっこしよ【黒】

15.だから、あとで抱きしめていい？ ページ16

あれから忙しい日々が続いて、車内以外は二人になる事は無い。

きっとこうして忙しく目黒さんが仕事に追われている間に
あっという間に1ヶ月は終わるんだろう。

「モコがめっちゃ寂しがっててAに会いたがってるから今度また遊びにきてよ」
「ありがとうございます」
「俺もめっちゃ寂しいって知ってた？」
と後部座席からの声が近くなれば、運転席のシートに顔を近づけて目黒さんが話しているから妙に緊張する。
「普通に泊まってもいいし、そしたら時間気にせずうち来れるっしょ？」
目黒さんの声ってなんでこんなに色気があるというか、低く優しく色気があって…ぞわっとするんだろう！

「運転中なので目黒さん…やめてください」
「喋ってるだけじゃん」
と笑うけど、近距離で話されるだけで目黒さんは破壊力があるんです！

事務所に到着して目黒さんが車を降りる前
「はい」
と目黒さんが渡してきたのはお弁当。
「え！私作ってませんよ！？」
「シンプルに俺がAに作りたかっただけ」
お昼に食べてね、俺の愛感じて？と笑って車を降りて行く。

目黒さんはごっこ遊びなのに毎回好きだとか愛情だとか、声にして伝えてくる。

本当の彼女だったらものすごい幸せなんだろうけど…なにせごっこなのだ。

俳優としても活躍されている目黒さんからしたら台本を読んでいるようなもので設定を楽しんでいるかもしれないけれど、一般人の私にはハードルが高い。

真に受けてしまったら終わりだ。

ごっこ遊びを始めて、確かに目黒さんはお仕事が順調に回り始めている…気がする。

会社についてスケジュールと目黒さんへのオファーやオーディションを確認すれば、本人が前から希望していた映画のオファーがある！！一応オーディションがあるけれど目黒さんに来ているオーディションだから合格する確率も高い！でも新曲や歌舞伎の練習もはじまれば目黒さんの負担は大きくなる。

でも目黒さんに伝えたらきっと喜ぶだろう。
早く教えてあげたくなる。

目黒さんが休憩に入ったタイミングで様子を伺えば目が合って、手招きすれば駆け寄ってきた。
「どうした？」
「目黒さん…これ」
オーディションのお知らせを渡せば
「うっしゃぁあ！！マジで！？」
ガッツポーズをしてしゃがんで喜びを噛み締めて、また立ち上がって
「マジで嬉しい、俺がんばるわ」

ごめん、めっちゃ抱きしめたい。

そう耳元で囁いて

「今は我慢する」

と目尻を下げて笑った。


(だから、あとで抱きしめていい？)

16.このオーディションに合格したら君に…→←13.君の気持ち、本当は少しわかってるんだ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す