眠れぬ夜に君の声【黒】

7.私から言えない言葉に嬉しい誘い ページ7

目黒さんと添い寝友達になった。

お互い眠れなくて辛くなる前にちゃんと 言って助け合おうと指切りをした。


が、私から言えるわけがない。


目黒さんの家からの帰り道、もしかしたら不眠が治ったのかもしれないと思った。


「Aちゃん、今日調子いいじゃん」

顔もスッキリしてる！

仕事中も色々な人がそう言ってくれるぐらい、わかりやすく体も動くし頭も回る。


目黒さんありがとう！！


その日絶好調な私は鼻歌混じりに仕事をこなし、アイデアも浮かぶし打ち合わせも進む。

いつもの2倍動けるんじゃないかというぐらい、プレスの衣装レンタル受け取りも数件回って体力的にはもうへとへとで、夜中に帰ってきて倒れるように眠る。



はずだった！！！！




眠れない！！！！




疲れているのに、眠たいのに眠れない！！！！




ベッドの上で何度も方向転換をして転がって、桃太郎を頭の中で繰り返してみてもまったく眠れない！！！！


自分の頭の中で桃太郎を話す目黒さんの声を思い出しても眠れないから、アプリをダウンロードして読み聞かせを声優さんにしてもらったり、試行錯誤しても眠れない！！！！

どんぶらこ聞き飽きた！！！




…そうか、昨日寝過ぎたから今夜は眠れないのか。

しっかり寝たから、きっと今夜は寝なくても大丈夫なんだ。

無理に寝るのはやめて、映画でも見よう。


そう思ったら朝になっていた。


まぁ、1日ならどうにかなるだろう。


そもそも不眠には慣れている。




もちろん弱音を吐けなくて、毎日毎日また眠れない日々が続いて


そろそろ辛い、と思っていたら目黒さんから連絡が入った。



目黒さんも辛いらしい。


…助かった！！！！！！


自分から言い出せなかったから嬉しい。



今夜はぐっすり眠れると思ったら仕事中も嬉しくて捗る。



しかも目黒さんから時間があるならご飯を作りすぎたから一緒に食べてくれませんか？と優しい誘い。

早めに仕事が終わって、何か手土産を持って行った方がいいかとスイーツを買ってから一度家に帰った。




ご迷惑にならないように、シャワーを浴びて眠るだけになるように準備をする。


お泊まりセット、と言っても歯磨きと着替え程度。


目黒さんの家でメイクするのも図々しいかと、メイク道具も持っていかずに家に帰ってからするし

とにかくご迷惑にならないように考える。





「Aさん、いらっしゃい」


「…おじゃまします」




この瞬間が一番気恥ずかしい気がする。

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