眠れぬ夜に君の声【黒】

28.会いたいけど、会えない日々 ページ33

心臓がバクバクと音を立てる。

頭の中が混乱している。


どこかショックを受けている自分がいる。


目黒さんが嘘なんかつかないと思っていたから

会うたびに不眠症の話をして

会う理由も不眠症で

お互い困っていてそれを解決できる関係だと思っていたから

もし目黒さんが嘘をついていたとしたらショックだ。



一緒の悩みを抱えていた事が少し嬉しくて


添い寝友達なのが、二人だけの秘密のようで嬉しかったんだ。



だから私はショックなんだ。








仕事を終えて家に帰っても

何も考えられない。


今まで入っていた目黒さんからの連絡の履歴をぼーっと遡りながら眺めていれば

ちょうど目黒さんから連絡が入って


私はをつけたくなかったのに

すぐ既読がついてしまった事に動揺した。



内容はこれから泊まりに来れないかの確認で

ちょっと具合が悪いのですみませんと私も嘘をついた。



心配してくれるメッセージが届いているのに

スマホを伏せた。




どういう感情で目黒さんに会っていいのか

何をお話ししていいのかわからない。




目黒さんは不眠じゃなかったのなら

私だけが徳していたのかと思うと本当にご迷惑をおかけして、優しさに甘えすぎていたと反省をする。



一人でグルグルと同じ事を何度も考えて

何度も反省をしては

同じ疑問にたどり着いては思考停止する。




目黒さんはなんで私と添い寝をしてくれたのか。




それを考えようとすると自分に都合のいい事しか浮かばなくなりそうで、すぐに考えをかき消す。




本当ならこんな堂々巡りをするよりも

なんで嘘をついたのか

嘘じゃなくて渡辺さんが不眠症を知らないだけなのかを

本人に確認すればいいだけの話。




もしかしたら嘘なんかついていなくて

今も不眠で困っているかもしれない。



でも、自分の感情が不安定すぎて会えないし



眠れない日々が続いていく。



「Aちゃん、目の下やばいよ？」

やばいのは目の下だけじゃなさそうだけど。と先輩に言われて苦笑いをした。



「大丈夫です。ちょーっと寝不足なだけで」




目黒さんに会いたくて会いたくて会いたくて



でも怖くて会えない。



ただひたすら、体調不良で会えないと断り続けていた。




俺、看病にいっちゃだめ？

Aさんが心配だから

眠れてる？

会いたい

心配だから連絡して？



目黒さんからの言葉が既読にできないまま

雪のようにそっと優しく積もっていく。

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