眠れぬ夜に君の声【黒】

23.ふいうちの目黒さんは心臓に悪い ページ28

「今日現場ここだったんだ？俺も今収録で入っててさぁ」


そう言う目黒さんは黒いツナギを着ているから冠番組の収録なのだろう。



「そうだったんですね、びっくりしました！」




急に仕事の最中に偶然会うなんて思っていなかったから

心臓がうるさい。





驚きすぎてバクバクと音が鳴っている。






遠くに別のカラフルなツナギが見えて


「めめー！」


と呼ぶ声がする。




「呼ばれてますよ？」

と目黒さんの後ろのメンバーさんがいる方向を覗ように視線を送れば




一歩、目黒さんが足を前に出して


ポケットに手をつっこんだまま少し前屈みになれば


私との距離が近くなって



そっと耳元で


「Aさんに会えてめっちゃ嬉しかった。じゃあまた今夜。待ってるから」


と低く優しい声で囁いて


離れる瞬間ににっこりと微笑んで


じゃあね。と小さく言って


「あ、お疲れ様です」

と私が会釈をすれば、目黒さんも会釈をして戻って行った。




目黒さんがモデルを務めるページの撮影現場で会うのはスケジュールも決まってるし心構えができているし

目黒さんの家に添い寝に行く時も毎回緊張はするけれど、多少心構えができているからいい。



でも…ふいうちの目黒さんは心臓に悪い。


現場で偶然会う事なんてあるんだ。


頬が熱い。



笑顔で去って行った目黒さんの残像が、声が耳にも残っていて

仕事中幸せすぎて何度も思い出してしまう。




ふと、高校生の時に好きな先輩と廊下ですれ違って話しができた日の事を思い出した。

まるで今、私はあの頃と同じように純粋に恋をしているんだと実感する。





でも相手があの目黒さんだから、叶うわけもなく、ただ切ないというか苦しい。

でも今、私が幸せな事には変わりなく




睡眠も取れて恋もして、仕事も順調だ！！！！



と思ったら



夕方になって

急に天気の関係で来週予定していた撮影スケジュールの変更が明日に入って

それに伴ってプレスに電話してレンタルを前倒しでできないかとか、

OKが出ればレンタルに走ったり、慌ただしくなって時計やスマホなんか見られなくて




幸せの反動がえぐい！！！







終わったのは深夜で


事務所でぐったりと時計を眺めて


スマホを取り出せば


目黒さんが何時になってもいいから連絡してって。






本当はご迷惑だから家に帰るべきなのはわかってる。




でも疲れすぎて…会いたい！！！！

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