眠れぬ夜に君の声【黒】

1.初めて聞く声と手の温もり ページ1

最近私はまともに眠れていない。


スタイリストの仕事が忙しくなってきて

名指しで依頼される事が増えて

忙しさとプレッシャーは心地よく

頑張れるとすら思っていて

女性だけでなく、メンズファッション誌でも担当ページを持たせてもらえるようになって二年。



テレビでの仕事も色々な仕事で自分の時間がなくなりつつあって

楽しいと思いながらも一つだけ不安を抱えていて…


「Aちゃん彼氏いないの？」

それは現場でよく会う男性で

最初の言葉はそれだった。


「いませんよ、そんな余裕ないです」

笑って返した。


仕事で必要だったからただ連絡先を交換しただけなのに

執拗に連絡が来るようになって

それが夜中急に電話がかかってきたり

別に好きだと言われたわけじゃないけど

まったく好意を持っていないのを態度で表しても

馴々しく、いつもと変わらない態度で


家を教えていないのに、インターフォンが鳴って

まるで私が開けると思っているように笑顔で立っていて怖くて


最近、私は引っ越しをした。



仕事は好きなのに、一緒の現場になりたくなくて憂鬱で


怖いと思うからか、眠れない日々。



一瞬のうたた寝はできるけれど、しっかり寝られた記憶がない。



もう深く気持ちよく眠る方法なんか思い出せもしない。



眠れないと仕事に集中できなくなるし悪循環だから眠りたい、なのに眠れない。






「次号から新しいページ追加で担当してもらえる？」

目黒くんのページ。


そう言って編集長が付箋のついた雑誌を開いた。


いつものページの打ち合わせ中に言われて、そのページは読者さんからの反響も多い人気のページだと知っていたから嬉しくて

「本当ですか！？がんばります！ありがとうございます！」

そう返事をして、増えたページ分の打ち合わせをした。



仕事が増えて夜スタイリングを考えたり

昼にはブランド回ったり連絡したり、撮影スケジュールを聞いてレンタルの調整をする。


目黒さんはスタイルもいいが顔面もいい。

夜な夜な目黒さんに着こなしてもらうイメージを描いて楽しくなって


ますます不眠に。




次号の新規担当ページの編集部での打ち合わせで

目が合った瞬間立ち上がって

手を伸ばした彼。


「よろしくお願いします。SnowManの目黒蓮です。いつもAさんの担当してるページ見てました」

嬉しいです。とお辞儀をして握手をしてくれる目黒さんの手の温度と声が心地よくて




なぜか一瞬、ふんわりと眠くなった。

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