返事がない､ただの屍のようだ。 ページ14
.
「 うわ。すみません…… 」
「 ……… 」
何かにぶつかり､咄嗟に謝罪の言葉を舌に乗せる。
自分に非があれば悪いと思っていなくても謝る。これが私が数十年生きた中で培った処世術のひとつである。――のだけれど
あっれ､返事がない。ただの屍か？
ちらり､視線を上げた先に居るのは細身の男。
無邪気な猫っ毛から覗く血色の悪い歪んだ表情。真っ黒なフードの影の中で赤く光る瞳。ジーザス､私の人生終わった。
「 ……何 」
「 あ､いや…ぶつかっ…… 」
いつの間にか交わった視線。不機嫌なその声はやはり聞き覚えのあるもので。普段の私ならばcv.内山昂輝キター！なんぞと騒ぎ立てるのだろうけれど､状況が状況だ。そんな場合ではない。
しどろもどろな言葉に､彼――死柄木弔は眉間にしわを刻む。
やっべ､気分を害してしまった！危険人物の気分を！害してしまったぞ私！なんて事を！
「 死んだ。私死んだ 」
「 ……あ？ 」
「 どうか､何卒命だけは…… 」
まだ何も言われて居ないというのに､必死に頭を下げまくる私。それはもうペコペコと､お得意様に粗相をしてしまった社畜のようにペコペコと。やばい私将来営業しようかな､ヒーローデクの売り込みしようかな。
話を脱線させるのが特技な私。しかし急にフリーズした事が気に入らないのか､目の前のその人はぐいっと私の顎を掴み視線と視線を合わせた。
顎に鋭い痛みが走る。
形容し難いそれに､声を上げることすら出来ず唯々顔を歪めるのみ。
個性を使えば済む話だが……敵連合は回復キャラを欲していた。ここで私が個性を使うのはリスクしかない……。――のだけれど
「 無理無理無理無理！痛い！馬鹿！痛い！ 」
何これ痛い！痛い！と喚きながら､死柄木の体を両手で力いっぱい押し､距離を取る。
何これ､皮膚が崩れ落ちるとは未知の経験過ぎて。
漫画を読んでる時もそれを味わった事がないから､痛そう､相澤先生痛そう！なんて感情移入すら出来なかったけれど！
「 うっ……くそぉ…痛いよぉ……なんだよぉ…… 」
後退りで奴と距離を取りながら､自らの手で顎に触れる。
ひやりと､まるで冷気を当てたかのような感覚の後そこは微かな光を発し､それが消えた頃には。
「 へぇ､治癒能力ね…… 」
私のお顎は傷なんて見当たらず､皮膚が再生し若々しいお肌がやって来た。
「 はは！いいねぇ！やっと見つけたよ！ 」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 706人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜(プロフ) - 山梨のリンゴは美味しいよ！ご近所さんからおすそわけされて10個あるからこれから食べるんだぁ……← (2017年12月19日 16時) (
レス) id: 32815752b3 (このIDを非表示/違反報告)
ウィル・オ・ウィスプ(プロフ) - 相変わらず過ぎて草しか生えない (2017年11月18日 23時) (レス) id: 8be9143447 (このIDを非表示/違反報告)
ウィル・オ・ウィスプ(プロフ) - アルトさん！！！志望が死亡になってる！！！死んじゃッてるよぉ！！！ (2017年10月14日 1時) (レス) id: 8be9143447 (このIDを非表示/違反報告)
ウィル・オ・ウィスプ(プロフ) - 読めば読むほど主人公に対するツッコミが成長していく気がする…(疲労) (2017年10月1日 23時) (レス) id: 8be9143447 (このIDを非表示/違反報告)
Alice(プロフ) - “変態だヨ！全員\集合/”に出てきた虎さんなんですが、ピクシーキャッツではなくプッシーキャッツじゃないですか…？私の記憶違いでしたらすみません… (2017年9月29日 1時) (レス) id: 9007c89a5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ARutO. | 作成日時：2017年5月9日 0時
