桜色の薔薇は永遠に【紫×緑】 (ページ46)

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雑踏と、風と、空気と。
一気に音量を増したような気がした。
それほど俺の中は途端に静寂で。

紫「...ごめん、小瀧。
俺好きな子がおるんや。」
桃「知ってます。
本人から惚気聞いてるんで。
俺、絶対神ちゃんより
濱田先生のこと好きでした。」

言えた。ちゃんと。過去形で。
良かった。

桃「今日ね、フラれに来てん。」

伝えたいことは全部伝えようって、
俺の中で決めてきたことだから。

桃「ちゃんと濱田先生にフラれて、
俺は自分の恋を誇れるようになろうって
決めてきてん。」

心はこんなにすっとして行くのに、
涙が滲むのはなんでやろ。

桃「俺先生の言葉忘れてへんよ。
先生が大好きやったんやもん。」

先生を見たいのに、
先生の表情を直視したいのに。
なんで、涙が止まらんよ。

桃「あと神ちゃんが言うてた。
濱田先生はほんまに人が好くて、
みんなに好かれるから、離れて行かんかなって
たまに不安になるって。
これも伝えとこうと思って来てん。」

こんなに憂鬱が溶け出して、流れ出して、
消えていく。5年間もこびり付いた憂鬱が。

桃「神ちゃんな、
まじで濱田先生のこと好きやねん。
あんま言わんみたいやけど。やから、
俺の友達をこれからもよろしゅうです。」

ぺこっ、と濱田先生に頭を下げた。
俺酷い顔してるんやろなって思うと、
ちょっと顔上げられへんわ。
その頭に、流星よりも細くて、
柔らかな温もりが乗っかる。

紫「ありがとう、伝えてくれて。」

優しく髪を撫でる先生の手は、
先生の手やった。好きな人の手やなくて。

紫「悪かったな...。」
桃「先生は悪ないよ。」

顔を上げた俺は、今どんな顔してるんかな。
笑顔してるつもりなんやけど、
どんな笑顔になってるんかな。

桃「言いたいこと、みんな言えたから
俺帰るな？流星がイライラしてるやろうし。
俺流星のとこに帰るって約束して来てん。」
紫「愛されてんなぁ。」
桃「うん、めっちゃ愛されてんで！」

きっと、すっげぇ笑ってるで俺。
幸せそーに笑ってるよ。

桃「ほんまにありがとうございました。
ほなまたね！先生！」
紫「おう！見てるからな。頑張れよー！」
桃「ありがと！」

歩き出す。もう振り返らない。
俺は人混みと雑踏に呑まれて、
求める先は一人だけ。