漫画みたいに甘くない！2

75話 元の世界 ページ36

...ピ....ピ....ピ....







.......ん....？朝.....？



何...この音....






遠くに聞こえる機械音に耳を立て、うっすらと目を開ける。







｢...........？｣







見覚えのない白い天井






少し鼻につく薬品のにおい









...薬...品.....？





｢.......！？｣








嫌な予感がし、ガバッと身体を起こす。







｢(...ま、まさか.....！)｣






目に飛び込んできたのは







白を基調とした無機質な病室だった。









.........戻って.....来ちゃった.......









そう思い、少し俯くと







腕から伸びる細いチューブと









｢.......えっ...？｣









私の寝ているベッドに、うつ伏せで眠っている女性が目に入る。









｢........お母、さん.....｣








口からこぼれたその言葉に







母｢...........A.....？｣







さっきまで眠っていた女性は目を覚まし、ゆっくりと顔を上げ









母｢A.....A.....！！...あぁ、良かった...！｣









そう言って泣きながら私を抱きしめた。









｢...ちょっ...((母｢いつも仕事ばかりのお母さんで...寂しい思いさせて、ごめんね...。｣






｢っ...！｣









思ってもみなかった母のその発言に、言葉を詰まらせる。








母｢Aが倒れたのを見た時は本当にどうしようかと思った...。｣






お母さんはそう言って、ごめんね、ごめんねと何度も謝った。









.......私.....





スッと、涙が頬を伝う。







｢....お母っ.....さん.....｣








なんて自分勝手なんだろう...







｢...ごめんっ.......｣







お父さんもお母さんも仕事が忙しくて家にはご飯を作るためだけに帰ってくるようなもので、学校じゃ親友と呼べる友達なんてできなくて、




こんなつまらない世の中ならいなくなっちゃいたいって、大好きな漫画の世界に行ってしまいたいって、そう思ってた。








...でも...ちゃんと心配してくれる人がいたんだ...。






そんな大事なことに気付けていなかったなんて。








｢.....ありがとうっ.....｣








私はお母さんの背中に手を回し、その暖かさを全身で感じた。

76話 恋しいあなた→←74話 “もしも”が“もしも”じゃなくなる時

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す