* い ち ご み る く * 2

71。You*side ページ30

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『…やだ』


坂「どうしたん？」

『やぁだ！』




またぎゅうしようとしてくるさかもとから必死に逃げる。


どうにかベンチから降りると
頭の中がぐちゃぐちゃのまま、ぜんりょくで走り出した。




坂「A！」



さかもとが追いかけてくるけど、掴んできた腕を思い切り振り払う。



『来ないで！』






今まで考えたことなかった。

性別のせいで、私とみんなが違うなんて。






野球を始めた頃から

男の子が友だちで
女の子はどちらかというと遠い存在


中学生の時は
それが理由でいじめられたこともあった


だけどその時も
私を守ってくれたのは野球部の友だち



小学生の時も、高校生の時も、
ずっと一緒に居たのは野球部の男の子

プロになってからも
ジャイアンツのみんなが友だち…



…だと

思ってたのに…






“みるく好きやで”


あの時も


“俺はAのこと、誰よりも好きだから”


あの時も


“俺もみるく大好きー♪”


あの時だって




全部全部
嘘だったのかな

本当はみんな
めーわくしてたのかな



仲間だと思ってたのは
私だけ？









『あ…れ、ここどこ…』






気づけば知らない場所
ビルが建ち並ぶ大通りに一人。


上の服はもうゆにふぉーむだったから
ばれないように慌ててせまい路地裏に入った。



もう辺りはくらくなってて
ケータイを見れば、とっくに試合ははじまってる時間。

みんなのことを思い出して
また涙がこみあげてくる。



その場にしゃがみこんで
膝に顔をうずめて泣きだした。









？「あっれー？なんで泣いてるのー？」



顔を上げると
チャラそうな知らないおにいさんの姿

暗がりのなかで
金色のぴあすがギラリと光る。




『なんでも…ないっ』

男「ふーん？」




おにいさんは私の顎をつかんで
目をあわせてくる。

楽しそうに
にやにやしながら。




男「お前、ジャイアンツの乙女？」

『っ…』

男「ラッキー♪可愛い子ゲットー♪」




なんて言って
私のスカートの中に手を入れてきたおにいさん。

びくっとして
その手をはたいてしまった。





男「…お前、生意気」




ドン、と地面に押さえつけられ
頭をぶつけて痛い。



さっきのさかもとのように被さってきたおにいさんが
さかもととは違ってなんだか怖く思えて


周りを見てみるけど
この路地裏に人が通るけはいなんて、ない。






『はなして…っ』







誰か

助けて…






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