チャンピオンロード (ページ40)

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第40話【masai side】ページ40

撮影時間が遅れると連絡があって一時間、ンダホは少し用があると何処かへ出掛けて部屋で一人静かに作業の続きをしていた。
その間も俺からAへ謝罪の連絡を入れるべきか迷いながら冷めた珈琲を口にする。
すると、エントランスの呼び鈴が鳴ってンダホが帰ってきたと思いモニターを確認すると、Aだけが申し訳なさそうに立っていた。
短く「今開ける」と伝えて数分後玄関のインターホンが鳴り、出迎えてやった。

ﾏｻｲ「…おかえり」

『あの、マサイ』

ﾏｻｲ「うん、とりあえず入れば」

謝ろうと口を開いたタイミングを測ってわざと言葉を被せた。
リビングのテーブルに向かい合う形で座って、何か言いたげなAを待つ。
やっぱりここ数日俺の部屋に泊まっていた事には何か理由があったらしい。

『最近、マサイと勘違いした視聴者が毎日俺の家に来るようになって』

その言葉につい眉間に皺を寄せてしまった。
詳しく話を聞くとシルク達にはもう相談済みで、シルクには俺の近くに引っ越すように提案されたらしい。
Aへのストレスは「マサイ」と呼ばれる事だ。
今も昔もそれは変わらなくて、俺自身もAと間違えられるのは嫌だ。
双子だから仕方ないだとか、双子だから同じだとか、同一人物のように扱われる事がストレスになる。
だから俺はYouTube、AはWebデザインというカテゴリでバラバラな事をしていた。
どれだけ皆に俺達は個別の人間だと話しても、同じ見た目でシャッフルされればその違いは本人達にしか分からない。
「ごめん」と小さく謝ったAに呆れも生じ溜息をついた。
悪いのはその視聴者と勘違いして怒った俺であり、Aは何も悪くない。

ﾏｻｲ「話してくれて良かった、俺の方こそごめん」

『マサイには迷惑掛けるつもり無かったんだけど』

ﾏｻｲ「迷惑も何も、俺の大事な大事なオ兄チャンを悲しませてくれた視聴者さんに苛立ってますよ」

『お兄ちゃんとか言うな、同じ歳なのに』

ﾏｻｲ「でも、ま、そんな理由なら仕方ない。荷物纏めて俺ん家においでよ、家見つかるまで」

『あ、家は決まったの、此処の上』

ﾏｻｲ「は？」

『シルクが手配するってさ』

ﾏｻｲ「あの野郎…やられたなお前も」

『え、何で』

ﾏｻｲ「このマンションに住まわして撮影場所増やそうとしてんのどう考えても分かるじゃん」

『マジで？』

うーん、純粋と言いますか抜け過ぎてこのお兄ちゃん心配だよボクは。