35）涙 ページ35
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「え...Aさん....？」
マイクが、チャンミンくんの声を拾う。
みんなが、こちらに振り向く。
「ちょっと、A、大丈夫！？」
みんなに見られても、知実に心配されても
まだ涙は止まらない。
せっかく楽しい席なのに
このまま、ここにいても、みんなに迷惑しかかからない。
立ち上がって、外に行こうとした時だった。
それより、早く私の右手を優しく取って
「外、行きましょう」
声をかけてくれたのは、チャンミンくんだった。
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右手を握ったまま、少し急ぎ足で、外まで出る。
少し考えたあと、
「帰りましょう。荷物取ってきます。」
私を店の前のベンチに座らせ
チャンミンくんはもう一度、店に戻って
すぐに私と自分の荷物を持って戻ってきた。
自分のハンカチを私に渡し、
そして、また私の右手を取って歩き出す。
チャンミンくんは、私の顔を一度も見ない。
見ちゃ、いけないと思っているのか....
だけど、繋がれた手がとても温かくて
それが、すぐに、優しさなんだと気づく。
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どれくらい歩いただろう。
止まらないと思ってた涙も、すでに止まっていて
まだ、チャンミンくんは優しく右手を繋いだまま
少し前をゆっくり歩いている。
「チャンミンくん、ありがとう。もう大丈夫だよ。」
そう声をかけると、チャンミンくんがやっとこっちを見た。
「あ....勝手に、すみませんでした、連れ出して....。」
今度はなぜか、チャンミンくんが泣きそうになってる。
「ううん、ありがとう。」
「タクシー、拾いましょう。」
『泣いた理由、聞かないの？』
そう聞こうと思ったけど、
きっとチャンミンくんは聞いちゃいけないと思ってる。
まだ、繋がれてる右手に少し力が入った。
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作者名：ちゃむ | 作成日時：2020年8月29日 16時
