9）違う-cm ページ9
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「俺....変なこと聞いちゃいましたよね。」
ははっと、笑って稲垣さんは教えてくれた。
「Aさ、5年付き合った彼氏に振られたんだよ。」
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「そいつが、ロングヘアー好きだったわけ。だから....切ったんだろうな。少しでも前に進めるように。」
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「俺たちも結婚するんだろうなって思ってたくらいだから、Aは相当ダメージきてると思うよ。」
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「仕事では、そんなそぶり出さないけど。」
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「だから、チャンミンは何も悪くない。気にすんな。それに、今に普通に戻ってくるよ、Aは。」
Aさんをよく知っているみんなだから
Aさんのさっきの答えを、あまり重くは受け止めていない。
だけど、俺には大問題なわけで。
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「髪を切るのにどんな理由があろうとチャンミンくんには関係ないよ。」
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確かにAさんが髪を切るのにどんな理由があろうと、俺には関係ない。
だけど、違う....。
違う、本当は理由を聞きたかったわけじゃなくて
その先が言いたかっただけ。
日本語ってまだまだ難しい....。
それに、『チャンミンクンニハ、カンケイナイヨ』が頭でずっとこだましてる。
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『カンケイナイ。』
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確かに関係、ないよな〜.....
言葉にされると、残酷。
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「気になるなら、行って来なよ。きっとAもチャンミンくん、ごめん〜って思ってるはず」
「うわっ！知実いつから起きてたんだよ！」
みんなが知実さんに驚く
「ずっと起きてたよ〜！ほら、チャンミンくん、ゴ〜！」
「ちょっと、行ってきます。」
「行ってらっしゃい〜！」
知実さんに見送られ、Aさんの元に向かった。
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「Aさん」
店の外のベンチに座るAさん
驚いたように振り向いた
「チャンミンくん....。あの....。」
「すみませんでした。」
「え！！」
頭を下げる俺を見て、慌てて立ち上がったのがわかった。
Aさんが髪を切った理由を知りたかったんじゃない
俺は、その先を伝えたかった
初めてAさんを知った時の
長い髪の笑顔が可愛らしい人じゃなくて
名簿で初めて名前を知った時の
長い髪を結んだAさんじゃなくて
今の、肩まで短くなったAさんの方が
いつもの可愛らしい笑顔が、似合いますって
そう、伝えたかっただけ。
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作者名：ちゃむ | 作成日時：2020年8月29日 16時
