《番外》SEVENTEENになるはずの紅一点 (ページ10)

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先輩に愚痴ってみる話　ゲスト:NU'EST JR ページ10

「げっ」
「人の顔見てげっは無いだろ」

練習室の鍵を返しに訪れた事務室を後にしようとしたとき、開けた扉の向こうにいたのは厄介なお兄さんだった。

私とほぼ同時期に入社したこのちょっと意地悪な男は、名前をキムジョンヒョンという、私たちのことを置いてあっさりとデビューしてしまった人だった。
事務所初の男子練習生で、初のボーイズグループのリーダー。

練習生の頃からなにかとちょっかいを出されているけれど、それが裏を返せば可愛がられているらしいということは最近認知した。
デビューしてからは忙しいのか練習室に顔を出す機会は減ってしまったものの、会えばそのたびにちゃんと話を聞いてくれるから、まあ悪い人ではない、はずだ。

「聞いたぞお前、SEVENTEENのプロジェクトに参加するんだって？」
「ワクワクした顔で言わないでください。これ以上私の傷を抉る気ですか」
「もう吹っ切れた顔してるじゃん」
「3割くらいしか吹っ切れてないです」

本当は2割くらいだけど。
飲むか？と渡されたジュースをありがたくいただいて一口飲んだ。火照った身体にシュワシュワの炭酸が気持ちいい。

男子チームへの合流が決まって体重制限が解除されたのにもかかわらず、ストレスと練習のし過ぎでどんどん減っていく体重を増やすためにはこれくらいなら飲んでも許されるだろう。
骨と皮だけ、みたいな状況は避けたい。

「私は女子チームでデビューしたかったのに…」
「でも当分女子のデビューは無いだろ、次はSEVENTEENだって会社の人みんなそう言ってるよ」
「それはそうですけど」

企画自体が動いているのはあのプロジェクトだけだけど、正直この会社は当てにならない。いつデビューできるという計画もあるのか無いのかわからないし、必ずデビューできる保証もない。

私がここの所属だと知っている同級生から「悪徳会社なんでしょ」と聞かれた日には「そうなのかなぁ」としか答えられなかった。他の事務所に入ったことはないので比べることもできない。

だんだん増えてきた女子練習生で地下牢獄から抜け出そうと日々一緒にやってきたというのに、私は扱いやすい実験体として男の子の中に放り込まれることが決定してしまった。これまでやってきた月日が水の泡だ。