《番外》SEVENTEENになるはずの紅一点 (ページ14)

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「柔軟してんの見た？すっげえ脚開いてた」
「どこ見てんだお前」
「いやそうじゃなくて！相当柔らかいよあれ。バレエとかやってたのかと思ったけど、別にそういう訳でもないらしいし。ダンスもうまかったよな」

アフスクの曲やったら俺も敵わないかも、と思案するこの男の10時10分のトレードマークは現在3時45分といったところである。
それでも、『アフスクの曲をやったら』なのだ。

「でも俺たちは、ボーイズグループだ」
「…そうなんだよなあ…」

初めての参加ということで今日の練習は先輩たちの曲を何曲か通してやった。アフスクの曲では誰よりも上手く踊ってみせた彼女が、NU'ESTとなると途端に踊れなくなった。

いや、踊れなくなったという言い方はおかしいかもしれない。

たしかに「踊る」という面では出来ていた。女子チームを抜けてから振り入れをしたというダンスは完璧だったしテンポもあっていた。
しかしどこか浮いて見えてしまう。俺よりも背が高くて手足も長いのに「女の子が踊っている」感がずっとついて回っている。ガールズグループだったら、と思わざるを得ない。

このままの状態で一緒にデビューするというのは、考えられなかった。絶望的なまでに高い壁があった。

「とにかく次のシーズンまでに何度か俺たちの方の練習に参加してもらって、慣れてもらうしかないよな。何とかなっかな、あれ」
「さあな、改善するかどうかはあの子次第だ」

あと数週間のうちに解決する問題とは思えないが、こればかりは彼女の努力にかかっている。

練習を終えて部屋から出て行った彼女は明らかに疲れていたし、表情もあまり良くなかった。
気疲れも身体面での疲労もあるだろうが、やっていて嫌でもわかったはずだ。自分が何をしなければならないかを。

気を遣って恭しく接するメンバーたちにイライラしていたのもわかったから、俺たち側にも課題はある。覚悟を決めて歩み寄ることが必要だ。もうどうにもならないんだから。

合流までに残された時間を最大限に使わないと、きっと全部が壊れてしまう。俺たちも、あの子も。

「俺たち本当にデビューできんのかな…」
「今はできることをやるしかないだろ」

やるしかない。
それが俺たちに残された唯一の道だった。