《番外》SEVENTEENになるはずの紅一点 (ページ12)

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「それでな、大分上は焦ってるらしい。早くお前をデビューさせなきゃって」
「私、ただの実験体みたいなんですけど」
「半分はそうかもしれないけど、もう半分はデビューさせる気があるってことだ」
「なんでそこまでして」
「それは知らない、でもまたSMに抜かれるとあの人は困るんだろ」

あの人、というのは代表のことだ。
少々関係が悪いような、でも裏では繋がっているような感じのあの人の古巣に私を取られたところで、こっちの事務所はお金をもらえるだろうし、長く居座っているだけの練習生とおさらばできるし、決して悪い話ではない気がするけど。

自分の知らないところで処遇が色々決められているのは、はっきり言ってしまうと心底嫌だった。

それにさぁ、とオッパは続ける。

「お前があっちの、女子の方にいるの、俺は正直いいことだとは思えないんだよな」
「何ですかそれ」
「お前、あそこにいると何でもやるだろ。自分がやらなきゃって。そうじゃなくて、お前も頼れる人を見つけた方がいい。そうじゃないと、いつか崩れる」

こういう核心的なところを突いてくるのが、この人がリーダーに選ばれた理由の一つな気がする。

「もう俺もミンギもドンホも、お前を守ってやれないんだよ」
「ミ、ミニョニオッパなら…」
「そうじゃないだろ」
「じゃあアロニオッパが……」
「ああ言えばこう言うなぁ」

私はこうやって親しい相手と真剣な話をするのが苦手なので、これくらいは許してほしい。いつもの面倒なお兄さんの形を顰めて、さも先輩のような顔をして暖かい瞳で見てくるのがむず痒かった。

「とにかく、スンチョリたちと頑張ってればいつかお前はデビューできるよ」
「本当なんでしょうか」
「まあ、多分。この事務所だから確約はできないな」

お前もわかってるだろ、とどこか呆れたように言う彼もまあまあ苦労している人なので頷かざるを得ない。
結局のところ、誰一人として今後のことがわかっている人はいないのだ。代表を除いて。

じゃあな、なんかあったら言えよ。
そう言って彼は私の手に派手な色の包装のチョコレートを押しつけて事務所を出て行ってしまった。多分このチョコレートもあの人が買ったものではない。久しぶりの甘さに舌が痺れそうだ。

こんなことなら揉み消される前にとっとと移籍して仕舞えばよかった、なんて考えは、このチョコレートに免じて心の奥にしまっておこう。