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すでに始まっているプロジェクトのメンバーとはこの間少し一緒に練習したけど、話したことがあるのは数人だけだったし、男の子たちの雰囲気にうまく合わせられなくてすごく困った。
最近はめっきり女子だけの練習が増えてしまっていたのもいけなかったのかもしれない。昔はもう少し交流があったはずだけどな。
廊下の端に追いやられていたベンチに座る。何年前からあるのか知らないけれど、キシキシとイヤな音を立てた。
「悪い子たちじゃないだろ、みんな」
「それはわかってるんですけど、全然知らない人もいるし…」
「スンチョリもドユニもお前と同じ時に合流するって言ってたよ」
「まだ増えるんですか、あんなにいるのに」
「増えるだろ、なんてったってSEVENTEENなんだから。名目上17人は要るだろうよ」
今いるだけで11人、2人のオッパとわたしと、年下の子が合流して15人、たしか2月の頭くらいにもう1人95年の人が入ったからその人も合わせて16人…こんなグループ聞いたことがない。去年デビューしたグループも人数が多かったけれど、それでも12人だった。
本当にこれ以上の人数でデビューさせるのか、単にふるいにかける目的なのかは分からない。
「お前にいいことを教えてやろう」
隣に座っていたオッパは立ち上がって私の前に立つと、悪巧みするような表情でそう言ってみせた。
この人の言う『いいこと』は正直あまり当てにならないけれど、いいから聞けって、と言われたので静かにしていることにする。
「お前、SMから引き抜かれそうになっただろ」
「なんで、それを」
「ヒョンから聞いた」
この場合彼の言うヒョンとはもちろんあの陽気なアメリカ生まれの人の方ではなく、何かと大変な立場に立たされている副社長さんのことを指している。
彼の言ったことは大体正解で、少しだけ違っていた。
引き抜かれそうになったというか、半ば引き抜かれていた。
遊びにおいでと言われるままに練習も何回か見にいった。契約するならという話しも少しばかりしていた。
こればっかりはよくわからないので、今の事務所に相談したら、その瞬間にもみ消された。
それがなかったにしろ、自分としては夢のような話ではあったけれど、こっちの事務所の子たちのことを考えると自分だけ抜けるわけにもいかないので結局断る気でいた。ただそれが早まったと思えば済む話だった。
この話はあの人と代表と一部の人にしか言っていないし、広めるつもりもなかった。
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作者名:cham | 作成日時:2022年8月21日 3時